想いを叶える親愛信託 91
第91回「贈与にする?信託にする?」

どれが自分に合っているか考える
自身が財産の管理が出来なくなった時に備えて、生前贈与を検討される方がいます。これまでは、贈与するか?相続まで待つか?の選択だったと思いますが、近年は、その2つに信託にするか?というのを加えて3つの選択になっています。
どれが優れているということではなく、自分にどれが合っているかというのをそれぞれの特徴をわかった上で選ぶことが大切だと思います。贈与と信託は財産の持ち主がお元気なときに行う必要があります。贈与をすると渡した人はその財産に全く関わることができなくなります。自身がその財産に関わりたくない場合や渡した人の自由にして欲しい場合には贈与が適していると思います。
ただ、相続税の計算上は亡くなってから7年前(現在は3年から段階的に7年になるので、渡した年で変わります)に贈与されたものは相続税の対象になります。遺留分侵害額請求に関しては基本的に相続人が10年と相続人以外は1年持ち戻しになるというように、誰が所有者になるのかということ以外にも考えないといけないことがあるので、相続税や遺留分を考えないといけない人は、どのような対策にするか早めに実行することが大切です。
ただ、渡した後にやっぱり返して欲しいと思っても贈与してしまうとどうしようもありません。贈与は自分のものではなくなるということをしっかり自覚しておく必要があります。
また、不動産を贈与する場合には贈与税のほかに不動産の登録免許税と取得税も考えておかないといけません。相続時精算課税を使って贈与税はかからなくても、他に費用がかかることはしっかり把握しておく必要があります。
贈与ではなく、相続まで待つと相続税の対象になり、相続になるので、その場合には遺言書を書いておく必要があり、相続の手続きの対象になります。そして、遺言書は自分が亡くなってから効力が発生するので、自身の生きている間の対策にはなりません。
自身の老後対策もできる選択肢は
では、信託を活用するのはどうでしょう。自分の老後の対策もできますし、相続の手続きの必要がなく自分の指定した人に財産権を承継させることができます。自分が受益権を持ったまま信頼できる人に財産を託し、名義だけを変えることができ、そこからの収益は自分のために使うことができるので、老後の対策もできます。
受益権を贈与することもできます。受益権を贈与するときに相続時精算課税を使って贈与もできます。もし、贈与を検討している人がいたら、信託財産にして、受益権を贈与することも選択肢に入れるとよいと思います。
不動産を信託財産にするときには相続と同じ登録免許税がかかりますが、受託者が取得するわけではないので、不動産取得税はかかりません。受益権を贈与した時も不動産そのものを贈与するわけではないので、信託の目録変更が一不動産につき1000円です。委託者も変更するのであれば合わせて2000円です。そして、受益者変更権者を選任しておくと渡した受益権を元の受益者に戻すこともできます。
受託財産にしてから受益権を贈与
自分のものでなくなることに抵抗がある人は信託財産にしてから、受益権を贈与することをお勧めします。信託は将来の不確定要素が多い時ほど活用するメリットが出てきます。何も対策をしないことが一番リスクなので、何か自分の将来のため、残された人のためにしておくべきです。
信託を活用するためには費用もかかるので、必ず信託が一番良い選択とは限りませんが、費用も今後長い間いろいろなことに使うことを考えると、もしかして信託を活用したほうが費用的にもかからずに済むこともあると思います。
大切なのは、自分に合った方法を選択することです。そのため信託、相続、贈与、税金などそれぞれに詳しい専門家に相談することが大切です。一人の意見ではなく複数の意見を聞くというのもよいと思います。自分で納得のいく方法がきっと見つかると思います。
監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)
よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長

略歴
2015年行政書士まつおよう子法務事務所開業。
16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。
著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。
(第1163号 2026年10月16日合併号 引用)




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