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札幌市の中古マンション市場分析2021

価格上昇で新築MS購買層も中古需要者に

単身者・2人暮らし向けの物件多い中央区


 中古マンション市場のストックを形成している過去の新築分譲マンション供給状況と中古物件成約との関連性、「間取り別」・「札幌市区別」の成約状況について分析する。


築浅物件成約の比率上昇


 新築分譲マンションの札幌市内での供給は1950年代半ばにスタートし、50~60年代に1万戸強、70年代に2万戸強、80年代に約4万戸、90年代には約9万1千戸もの物件が大量供給されてきた。

 ちなみに住宅金融公庫廃止、リーマン・ショックなどがあった2000年代は約3万5千戸、東日本大震災が発生し2度の消費税率アップが行われた2010年代は約1万6千戸と前の年代に比べ大幅に減少した。中古市場はこうした過去に販売された物件が市場に出回り形成されている。


 これまでに販売された新築分譲マンションの平均専有面積に焦点を当てると、90年代序盤は70㎡だったが、同年代後半になると80㎡へと急拡大した。2000年代に入ると前述したように供給戸数は激減するが平均専有面積は90㎡超となり、ここ数年は地価上昇、建築コスト高騰の中、販売価格を少しでも低くしたいという供給側の思惑もあって専有面積は若干縮小傾向にある。


 新築分野の供給状況・経緯を考慮すると、流通市場に出回る可能性のある中古物件予備軍は1990年代に建築・販売された分譲マンションが最もボリュームがあることが分かる。実際に昨年の中古マンションの成約でもこの年代の物件が3分の1以上を占めて最も多い(グラフ①参照)


 年代ごとの成約数シェアはここ数年ほとんど変化していないが、前年(2020年)との比較では「2000年代」が比率を下げる一方、築浅の「2010年以降」が比率を上げたのが特徴だ。


 中古物件の成約価格が年々上昇を続ける状況下、最近の傾向としては相対的に価格が安い築古側に成約がシフトしたことに加え、新築分譲マンションの販売価格が平均4000万円前後と高止まりしていることから、新築分譲マンションの購入を考えていた層が中古の築浅物件の需要者に加わってきている可能性がある。


 流通市場で成約シェアが最も高い1900年代に建てられた物件は、最近の売り出された分譲マンションと比較すると居間やトイレ、浴室などが狭いほか、購入希望者の要望が強く、現在販売されている新築物件では当たり前になっているウォークインクローゼットやシューズクローゼットが未だ一般的ではなかったことから、中古市場ではリノベーションのコアターゲットになっている側面もある。


 マンション・リノベーションでは間取り変更の際にこうした設備を増設するほか、最近の傾向として専有部分を小割にして部屋数を増やすよりも開放的な大空間を形成するプランが消費者の意向で主流になりつつあり、新築分譲マンションにはない個性・魅力を出す「3LDK」→「2LDK」、「4LDK」→「3LDK」などへの間取り変更が行われる例が多い。


 分譲マンションの供給は、投機目的のワンルームや1LDKの供給が増えた一時期を除き、各年で5~6割を占めてきた「3LDK」のいわゆる「ファミリータイプ」の物件供給が盛んに行われてきた結果、このタイプのストックは潤沢で、昨年、札幌市内で成約した中古マンションを間取り別でみても「3LDK」が半数近くを占めて最も多く、次いで「4LDK」の20・5%、「2LDK」の17・2%、「1LDK」の7・7%、「5LDK」の0・4%の順で続く(グラフ②参照)。この傾向はその年によって数%の差はあるものの、ここ数年同様の状態が続いている。



“区別成約”の傾向変わらず


 昨年の中古マンション成約数を札幌市10区別でみると、3分の1以上を占めて圧倒的に多いのが①「中央区」(34・1%)、次いで②「豊平区」(13・7%)、③「西区」(12・4%)、④「北区」(8・7%)、⑤「白石区」(8・6%)、⑥「厚別区」(6・4%)、⑦「東区」(6・3%)⑧「南区」(5・6%)、⑨「手稲区」(2・2%)⑩「清田区」(1・9%)の順になる。順位は20年に比べ「北区」(5位→4位)、「厚別区」(7位→6位)が上げ、「東区」(6位→7位)、「白石区」(4位→5位)が下げたが、各区の成約割合はほとんど変わっていない。


 ただし、区別・間取り別成約数をみると、一番の成約ボリュームである「3LDK」では全体の成約割合に比べ「中央区」は約31%と若干下がる一方、「1R」では44%、「1LDK」は46%、「2LDK」は45%と圧倒的なシェアとなる。


 「中央区」が成約数全体の3分の1以上を占めるのは、公共交通機関へのアクセスや商業施設の充実など利便性の面で他区よりも勝っていることもさることながら、「3LDK」「4LDK」のファミリー層需要に加え、「1R」「1LDK」「2LDK」を求める単身者、夫婦2人暮らしといった層に需要がある中古ストックを多く抱えていることも要因だ。


  一方、成約ボリームゾーンの「3LDK」に絞ると、成約順位は①「中央区」(31%)、②「豊平区」(16%)、③「西区」(12%)で「全間取り総数」の順位と変わらないが、北、東、白石、厚別、西の5区は7~9%の範囲でより拮抗する傾向にある


 中古マンションの成約傾向ではこれまでみてきた「築年数」「立地・環境」(区別)「間取り」のほかに、アクセスする公共交通機関の種類(地下鉄・JR・市電)、最寄り駅・電停からの距離、近隣のスーパーなど商業施設の充実度といった項目も深く関係している。


(第1072号 4月1日号 8面より 紙面はこちらから)

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