top of page

「構造設計者の価値向上を」さくら構造 田中真一社長

 近年、地震や台風などの自然災害が頻発し、建築の耐震・安全性への関心が高まっている。さくら構造(札幌)は、構造設計のプロフェッショナル集団として、構造設計者の価値向上を目指し、業界全体の発展を牽引する。新社屋「SAKURA VILLAGE」を建設したばかりの田中真一社長に話を聞いた。


—新社屋「SAKURA VILLAGE」の狙いは。

 構造設計者同士のコミュニケーションを促進し、業界全体の発展に貢献する拠点にすることが目的だ。安心安全な建築物を提供するために、知見を共有しながら技術を高め合う場になってほしい。オープンな議論が生まれることを期待している。

 2階には社員食堂兼カフェを設け、関係者が気軽に集まって情報交換できる空間を整えた。3~4階の吹き抜け部分には階段型のスペースを配置し、自然なコミュニケーションが生まれる設計となっている。


—建築構造の特徴は。

 RCラーメン構造を採用し、当社独自の耐震基準「TSUYOKU」適合の第1号物件だ。建築基準法の耐震等級は倒壊を防ぐことが目的だが、「TSUYOKU」は大破を防ぐことに重点を置いている。地震が発生しても、小破や中破で済む設計にし、外壁や窓が損傷しにくい構造だ。

 耐震性向上とコスト最適化の両立も実現した。 これまで手掛けてきた約7000棟以上の設計データを分析し、耐力壁を的確かつ無駄なく追加。壁の厚みを抑えた上で揺れを低減した。結果的にコストを削減しながら長期優良住宅レベルの耐震性を確保。「TSUYOKU」は現在、約20棟の受注があり、今後3年間で100棟の導入が目標だ。


—経営理念は。

 当社の最大の目標は「構造設計者の価値向上」だ。若手の育成を進めながら、札幌から全国、さらには世界へと技術を発信し続けていく。将来的には、子どもが憧れる職業ランキングのトップ3に構造設計者が入ることを目指している。

 業界全体の意識改革にも取り組む。構造設計の価値が正当に評価されるように、技術力だけでなく、社会的な認知度の向上にも力を注ぐ。


—今後の成長戦略は。

 2006年の設立以来、着実に成長を続けてきた。11年から経営に専念、14年から本格的に組織作りを開始。19年からは付加価値経営を推進し、高品質なサービスを提供することを前提に価格改定を実施した。単に単価を上げるのではなく、構造設計の価値を高めるための戦略だ。

 25年は売上25億円を目指し、将来的には100億円規模への拡大を視野に入れる。成長のためにM&Aなども構想し、さらなる事業拡大を図る所存だ。

 今はBtoBの事業展開が中心だが、今後はエンドユーザーへの発信も強化する考えだ。一般の消費者に向けても構造設計の重要性を伝え、業界全体の価値向上につなげていく。




田中 真一(たなか・しんいち)札幌市生まれ。2005年、田中構造設計を創業。2006年さくら構造株式会社を設立(代表取締役社長)。


(第1132号 4月1日発行 3面より)


Comments


bottom of page