想いを叶える親愛信託 90
第90回「農地と信託」

農地法の規制により一般の民事信託として実行できない
「農地は信託できない」という説明は、正確ではありません。信託法上は、農地だから信託財産にできないというわけではありません。ただし、農地には農地法による権利移転の規制があります。
信託法第14条では、「登記又は登録をしなければ権利の得喪及び変更を第三者に対抗することができない財産については、信託の登記又は登録をしなければ、当該財産が信託財産に属することを第三者に対抗することができない」とあるため。農地についても、所有権を受託者に移転して信託財産とするのであれば、形式的な権利移転の手続きとして、信託登記が必要になります。
ところが、農地法第3条第2項第3号では、「信託の引受けにより」農地の権利が取得される場合には、原則として許可をすることができないとされています。そのため、現在、一般の信託で農地を受託者に移転し、管理・運用してもらうという仕組みは実現できません。つまり、「農地は信託財産にならない」というより、農地法の規制によって、一般の民事信託として実行することができないというのが正確です。
制度検討が始まり信託を活用できるようになる可能性も
農地の所有者が高齢になり、農業を続けることが難しくなった。でも、誰かを雇って農業をしてもらうほどのノウハウや資金的な余裕もない――。このような場合、信託を活用できれば、元気なうちに農地の管理を託し、将来、本人が認知症になったとしても、農地を適切に管理・活用していく仕組みを作れる可能性があります。
これまで「農地も信託できたらいいのに」という声はたくさんありました。そんな中、2026年8月26日の日本経済新聞1面に「農水省、信託の解禁検討」という記事が掲載されました。農地を農家以外の親族にも譲りやすくし、相続による権利の分散や耕作放棄地の増加を防ぐため、信託の活用を含めた制度の検討が始まったという内容です。
今後は未定で条件つくかもしれないがが大きな進歩
もちろん、まだ「信託が解禁された」わけではありません。今後どのような条件が付くのかも分かりません。親族に限定するというような条件が付く可能性はありますが、信託に関わっている者からすると大きな進歩です。先々代の名義のままになっている、相続人が誰だかわからないなど価値の高い不動産であればあり得ないことが、価値の低い負の財産の場合、相続人が知らん顔するか、気が付いていないケースもあると思います。少なくとも信託が解禁になると相続で権利が分散することは回避できます。
「信託の解禁は農地の分散に歯止めはかけられても特効薬になるわけではない」と記事には書かれていますが、信託の解禁によって今まではあきらめていたことができるようになり、有効活用できるスキームがどんどん生まれてくると思います。
すでに共有になっていたり、相続登記がされていないものの特例のようなものを同時に検討していただいて、今から問題になるものはこれから信託を使って解決できるけれども、既に問題になっているものも信託を活用することを前提に解決できるようになることを祈ります。
相続や遺言で分け方を決めるときに財産価値が同じではないので、分け方を悩むと思います。その時に農地も信託登記できるようになれば農業を継いでくれる人に収益性の高い財産と農地を渡せるようにすることができます。農業を本人がしなくても農地として、貸してもよいと思います。信託を活用すると、複数の財産をまとめたり、受益権で割合で持つことができるので、農地の引継ぎ問題も公平に近い形にすることができます。
信託の未来に明るい情報が今後も増え、相続のもめごとや所有者不明の不動産などが減り、信託を使い、財産の有効活用ができるようになるのが一般的になる日が早く来ることように頑張って活動していこうと思います。
監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)
よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長

略歴
2015年行政書士まつおよう子法務事務所開業。
16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。
著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。
(第1161号 2026年9月16日合併号 引用)




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