想いを叶える親愛信託 82
- oikaway4
- 2 日前
- 読了時間: 4分
第81回「間違った信託の説明」

信託の普及による弊害
「信託が普及してきた」と感じることが、最近は多くなりました。名刺交換をしたとき、信託に対して興味を示してくれる方が圧倒的に増えています。
先日、信託とは関係のない別の要件で、建設事業者の方と話した際に「信託に取り組まれているのですね、所有者が100歳という物件があるので、今度相談させてください」と言われました。信託の存在をご存じなのにも驚きましたが、使い方までも知っていらっしゃいました。普及の広まりを感じた次第です。
ネットニュースにも、信託の紹介や活用事例が紹介されることが増えてきました。良い傾向だと思いますが、間違った説明をしていることも少なくないです。そこで誤解をされて、「信託は使わないほうがいい」と思われると困ります。ネットはたくさんの方が見るものですし、もう少しきちんと調べて正確な情報を載せてほしいものです。
例えば、信託と後見制度と全く違うものなのに、混同していた事例があります。後見制度は、被後見人の財産を減らさないように裁判所の関与を受けて財産管理をします。信託は本人の望みを叶えるため、信頼関係のもとで財産管理をするもので、性質が全く違います。
相続税対策をしたいという要望はよくあります。相続税対策とは、ご本人の財産を減らしていくことです。財産そのものを減らすか、価値を減らすか、債務を増やすことです。相続税は少なくしたいけど、財産は減らしたくないというのは無理なことです。もちろん価値を減らすと言っても、将来価値が上がるものに変えるという場合もあります。しかし、本人の財産を減らすことには変わりありません。後見制度は裁判所が判断してくれるから安心ですが、本人の財産を積極的に減らすことは難しいと思います。
一方、信託は本人の望んだことを目的とし、それを叶えるために信託財産を守り、活用し、場合によっては処分するのが受託者の義務です。受託者は信託財産の名義を持ち自由にできる、自分のために使うこともできるので危ないというような説明がされていることがあります。しかし、決して受託者の自由になるわけではありません。目的以外のことをすれば当然罰せられますし、それは信託法でもきちんと決められています
信託と後見制度の違い
先日のネットニュースに「通帳を取り上げられ、見せてももらえない」というような内容がかかれていましたが、これは信託ではなく後見制度の話です。
信託の場合、通帳が取り上げられることはありません。ご自身の持っている通帳はそのまま持っていただけます。ご本人名義の通帳がたくさんあると管理も大変ですし、相続の際は手続きも煩雑になります。そういった場合、1つか2つの通帳を残して、他をご本人の意思で解約することはあります。信託財産となった金銭を管理する受託者名義の「信託口口座」を新しく開設して、ご本人の預金から信託口口座に金銭を動かすといった流れです。ですから「通帳を取り上げられる」ことはありません。
さらに信託法38条では、受託者は信託財産について帳簿を作成し、受益者は閲覧を請求することができると定められていますので、自分の信託財産がどうなっているか教えてもらえないというのも間違いです。
また、信託法58条で受託者は「委託者と受益者の合意で解任することができる」と定められています。委託者は、判断能力がある間は受託者を解任できますし、別段の定めも置けるので、委託者が認知症になっても解任できるように信託契約の内容を工夫することもできます。信託財産にした時点で、信託契約を解約や無効にするのは難しいです。信託口口座を開設したり、関係者が出ていることが理由です。ただ受託者を解任して別の人を受託者にしたり、信託を終了することはできます。
中途半端な契約書を作ってしまうと後で困ることになります。経験豊富で、信託法もきちんと勉強している専門家に相談した上で、正しい情報を収集していただきたいと思います。
監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)
よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長

略歴
2015年行政書士まつおよう子法務事務所開業。
16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。
著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。
(第1147号 2026年1月1日2部 引用)







コメント