想いを叶える親愛信託 80
- oikaway4
- 3 日前
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第80回「認知症対策が必要ない人はいない」

財産をもったまま管理だけ移行
認知症は、なる人もいればならない人もいます。専門医のHPを拝見すると、認知症とは病気ではなく、「ある病気や障害などによって脳の機能が低下し、日常生活に支障が出ている状態」のことを言うそうです。そのため、認知症に該当する状況になる人と、ならない人がいます。
年齢相応の物忘れは誰にでもあります。これは認知症ではありません。「ご飯を食べたことを忘れる」のは認知症の症状のひとつです。しかし「昨日のご飯のおかずが何だったのか忘れた」というのは、年齢と共に訪れる物忘れのひとつになります。どんな人でも体力・脳の衰えは必ずあります。これは所有者の方がしっかり自覚して、事前に対策をしておくことが重要です。自分の現状を把握して、考えられるトラブルを未然に防げるような対応をしなくてはなりません。自分ではなく専門業者に委託しているから大丈夫という方がいらっしゃいますが、そもそもその専門家が大丈夫かどうかという判断が必要になります。
年齢だけではなく、趣味嗜好や職業によって情報量が違います。インターネットで検索をするにしても、得意な人とそうでない人では検索にかける時間も違うし、結果も異なってきます。そういったことを自覚して、早めに対策をするためには、信託はとても適しています。
財産を所有者である人が持ったまま、信頼できる人に管理権限だけを移すことができるのは信託だけです。例えば、不動産の情報をたくさん持っている長男に不動産を信託し、金融業界に詳しい長女に金銭と有価証券を信託し、経営が得意な次男に自社株を信託するというようなことができます。そして、どの財産も利益の部分の受益権は自身で持ち続けることもできます。
金銭を信託財産にする場合は、信託口口座を開設して金銭を管理します。もちろん信託口口座開設は信託の成立要件ではないので、作成しなくても金銭信託は可能です。しかし、信託の要件である分別管理の明確さや相続になった時のことを考えると、信託口口座を作らずにいるのは、実務的にとてもリスクが高いです。そのため私たちは、信託口口座を開設して信託金銭を管理することをおすすめしています。
信託口口座は受益者の預金ですが、預金を管理するのは信頼できる受託者です。銀行に行ってお金をおろしたり、送金できるのは受託者となります。受託者は受益者のために信託財産を管理・処分することが義務です。つまり、金銭を動かすときは、受託者が受益者のためになるように、預金をおろしたり送金したりすることになります。
二重チェックで詐欺撃退
このしくみは、認知症対策だけでなく、オレオレ詐欺(特殊詐欺)対策にもなります。電話がかかってきた本人が預金の操作をできないので、受託者にお願いすることになります。息子から電話がかかってきて、送金する相手が息子となるようなケースだと、受託者である息子は当然自分ではないことがわかります。最近では息子の立場ではなく、警察官を名乗る特殊詐欺もあり、高齢者だけの問題ではないようですが、自分事になると焦りますが、他人事だと冷静に対象ができます。そのような場合の対策にもなります。
このように、信託は二重チェック機能が働きます。受益者代理人や信託監督人を設定すると三重四重にもチェックできることになり、認知症対策だけでなく大きな財産を守るための仕組みにも使えます。そう考えると、親愛信託は認知症だけでなく財産を持っている人が使えることとなります。このように素晴らしい仕組みを使わない手はないと思います。
最近はデジタル化が進み、いろいろな手続きが少しずつ変わってきています。例えば、公証役場の手続きも電子化されました。公証役場の方によると、署名が電子になったことにまだ皆さんが慣れていないので、手続きに非常に時間がかかるそうです。今後もデジタル化はもっと進むと思います。そのような状況においても、親愛信託を活用すれば、得意な人に管理や手続きを任せることができます。
監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)
よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長

略歴
2015年行政書士まつおよう子法務事務所開業。
16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。
著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。
(第1145号 2025年11月16日号より 引用)








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