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想いを叶える親愛信託 78

  • 執筆者の写真: oikaway4
    oikaway4
  • 9月24日
  • 読了時間: 4分

第78回「配偶者は遺産分割協議には関係ない?」


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相続人の親族が意見を言う場合


 相続の話をするときに、相続人の配偶者は直接関係ないはずなのに、積極的にかかわってくる話をよく聞きます。ビジネスでもプライベートでも、これまで相続に携わったことがある方なら、相続人ではない親族が横から口を出してくるケースを一度は経験しているのではないでしょうか?


 そういった事例は実に多くあります。ただ、相続が起きてから話し合いをする場合、なかなか話がまとまりませんし、もめる原因にもなります。事前に何らかの対策が必要です。


 しかし、早めに対策をするとしても、当事者ではなく配偶者が意見を主張するとうまくまとまりません。相続人の配偶者は、相続に対して直接の関係はありません。しかし、相続人が財産を受け継ぐことになれば、その人が亡くなった後は自分のものになります。そのため、全く関係ないこともないのです。


 例えば、妻が相続した財産は、妻が何もせずに亡くなればいずれ夫のものになります。また、夫が相続した財産に関しても同様です。将来的に収益性が見込める財産であっても、逆に「負動産」であっても、いずれは自分のものになる可能性があると思えば、意見を言ってくることも理解できます。


 そうならないように、またそうさせないようにするのが親愛信託です。親愛信託のスキームを考えるとき、相続人や配偶者など、将来その財産に関わる可能性がある人に相談したり、伝えなくてもよいのかという質問はよくあります。


 基本的に、所有者は自分の財産を自由にできます。誰かに贈与することも、譲渡することも可能です。その時に、将来的に自分の財産に関わる人に相談を持ちかけるでしょうか?これはケースバイケースでしょう。相談する人もいれば、しない人もいると思います。親愛信託を活用するときも同じで、財産を持っている人が決めることです。


信託で財産の行く末を明確に


 信託を活用して、受益者連続にすると、民法の規定ではなく信託法の規定に従うことになります。そのため、法定相続や相続という決まりに従わなくてよくなります。信託財産になっている財産は、遺産分割協議の必要もありません。当初受益者が亡くなったら、次に指定している受益者が受益権を持ちます。そのため、相続人の配偶者が受益者でない場合は関係がなくなります。そう決めておけば、親族や配偶者が財産に関わる必要は、本当の意味でなくなります。


 「財産の所有者が先の先まで行く先を決めることは不公平」という意見があります。しかし、そんなことは全くありません。親や先祖から引き継いだ財産の行く先は決まっていますが、自分で稼いだ財産や増やした財産は自分の好きなように決めることができます。例えば、親から引き継いだ財産は、配偶者には引き継がずに子から孫に継承し、自分が築いた財産は配偶者に渡すこともできます。


 財産の所有者が、自分の功績とは関係なく引き継いだものと、自分で築いたものを分けられるのが親愛信託です。自分で築いたものは自由にでき、引き継いだものはそれに従うという仕組みを作っておけば、もめごとも減ると思います。


 価値のある不動産を取り合ったり、逆に「負動産」を押し付けあったりすると、親族の関係がぎすぎすします。長年に渡ってもめた結果、全体の財産を減らしてしまうケースも少なくありません。


 そうならないように、自分の築いた財産は責任を持って、管理の方法と承継先を決めるべきだと思います。信託は近年、認知症対策としてクローズアップされています。それは一つの方法ではあっても、全てではありません。それぞれに必要としている使い方があるはずです。


 私たちは、不動産に関わっている方が、親愛信託のしくみを把握し、自分のクライアントがもめず財産を減らさないスキームを提案することが理想だと考えています。





監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


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略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1141号 2025年9月16日号より 引用)







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