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想いを叶える親愛信託 77

  • 執筆者の写真: oikaway4
    oikaway4
  • 16 分前
  • 読了時間: 4分

第77回「不動産と親愛信託~所有者の想いをつなぐ賢いしくみ~」


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信頼する人に財産を託す仕組み


 不動産は一生に一度の大きな買い物で、人生の資産形成の中心となる重要な財産です。しかし、不動産には「分けにくい」「動かしにくい」「所有者の意思能力に影響される」という特性があります。そのため、相続や高齢化といったライフステージの変化の中で、さまざまな問題が生じることも少なくありません。管理や承継をしっかり決めておく必要があります。事前に対策をしておけば、自分も周りの人たちも安心です。


 このような課題に対応する新しい仕組みとして活用されているのが「親愛信託」です。親愛信託とは、「商事信託」以外の信託で、「家族信託」と呼ばれることが多いです。しかし私たちは、家族に限らず「信頼する人に財産を託す」という「想い」を大切にしたいので、「親愛信託」という言葉を使っています。最近は注目度も高まり、金融機関、銀行などの案内や取り組みが増えています。ほか公証役場でも、任意後見や遺言などと並んで、信託の紹介を見かけるようになりました。


 親愛信託は一部の富裕層だけでなく、むしろ相続の前段階で困りそうな一般のご家庭でも必要とされる仕組みです。何も対策をせず、自ら「困ろうとしている人」もよく見かけますが、まずは自身の現状をしっかり把握することが大切です。


 例えば、不動産の名義人である親が高齢となり、認知症などで判断能力を失ってしまう場合について考えてみましょう。本人名義のままでは、不動産を売ったり貸したりできないため、介護費用の捻出や生活資金の確保が困難になる恐れがあります。そうならないために、親が元気なうちに親愛信託を活用して、不動産の管理や処分を信頼する子に託しておくのです。親自身は「受益者」として利益を受け取り続けられるようにしておきます。財産の「所有者」と「管理者」を分け、前もって将来に備える柔軟で現実的な方法です。


2世代以上の承継も可能


 また「この不動産は自分が亡くなったら配偶者に承継し、その後は長男に、さらにその後は孫に引き継いでほしい」といった、世代を超えた想いを実現したいケースにも、親愛信託は力を発揮します。遺言では一代限りの指定しかできませんが、信託なら受益者連続という、複数世代にわたる資産承継の設計が可能になります。


 特に、賃貸マンションやアパートを所有しているオーナーにとって、親愛信託はとても有用です。賃貸経営には、空室対応や修繕、税務対応など、想像以上に連続して意思決定の場面が訪れます。そのため、オーナーが高齢になって判断力が衰えた場合、経営に支障をきたすことも少なくありません。


 しかし事前に信託契約で子や信頼できる第三者に経営の「権限」を託す仕組みを作っておけば、事業の継続性と自分の安心を両立させることができます。また、契約書の段階で管理・処分のルールを柔軟に設定することも可能です。そのため、昨今は、成年後見では難しい事前の財産管理ツールとして高く評価されています。


 親愛信託は「託した人を信じ、愛をもって財産を託す」仕組みです。贈与とは異なり、財産の最終的な所有権は移さずに、管理と利益を分けて運用できるのが強みです。ただ、設計には法的な専門知識と実務的な配慮が不可欠となります。


 私たちは親愛信託という仕組みを活用して、親族や周囲の人に対するそれぞれの想いを尊重し、よりよい未来を形にするお手伝いをしています。制度の導入は「いつか困った時に」ではなく、「まだ困っていない今」が適切なタイミングです。


 信託は自由度の高い制度である一方、契約書の設計を誤ると将来のトラブルにもなりかねません。不動産を含む資産の信託を検討する際には、専門家とよく相談し、家族の想いや生活設計に合った「信託設計」を行うことが何より重要です。これからの時代を生きる方にとって「備え」と「安心」をもたらす新しい選択肢です。人生にオプションをつけましょう!






監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


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略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1139号 2025年8月1・16日号より 引用)







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