想いを叶える親愛信託 79
- oikaway4
- 5 分前
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第79回「不動産オーナーのためのNISAと親愛信託の活用方法」

NISAと信託財産
2024年から新しいNISAの制度が始まり投資が身近になってきました。NISAとは「小額投資非課税制度」というもので、一定額のまでの投資にかかる配当や譲渡益が非課税になる制度です。安定収益を目指す不動産オーナーにとって、分散投資の一つの方法となると思います。特に「つみたて投資枠」と「成長投資枠」を併用することで、長期的な資産形成が実現できるようになりました。
しかし、不動産オーナーにとって本当に重要なのは「金融資産で財産を増やすこと」だけではありません。不動産という大きな資産をすでに所有しているからこそ、「どのように管理し、将来どう承継していくか」という将来設計が欠かせないのです。そのために「親愛信託」を活用し、自分の財産を信頼できる受託者に託し、その管理・運用・承継の方法を契約(信託行為)で定めておくことが重要です。遺言や贈与だけでは対応しきれない「長期間の財産管理」を可能にし、自分の意思を後世にまで引き継ぐことができるのは、親愛信託®しかありません。
では、不動産と金融資産の両方を持つオーナーにとって、NISAと親愛信託®をどう組み合わるのがベストなのでしょうか。
まずNISAは、本人名義の口座でしか活用できないため、信託財産をそのままNISAに対応させることはできません。ただ次の方法であれば、NISAを活用し、認知症対策や財産承継対策をすることが可能になります。
NISAで運用した株式や投資信託を換金して、信託財産とするのです。ご本人がお元気な間は、ご自身がNISAを運用して金銭に換金し、すでに信託財産にしている不動産などに追加信託します。それを繰り返すことで、信託金銭が増えていきます。その信託金銭は、受託者が活用することができます。既存の信託不動産の費用やリフォームなどにあてたり、新しい不動産を受託者名義で購入することが可能です。そうすれば、不動産や株や投資信託を所有権のままではなく、信託受益権にして将来の承継先を決めておくことができます。
このように、信託財産としてNISAを使うことは今のところできませんが、信託金銭を運用することは可能なのです。現に金融機関によっては、信託口座から投資信託を使って運用できるところもあります。また、NISAで税的優遇を活用して金融資産を増やし、増えた金融資産を金銭に変えて追加信託すれば、信託財産を拡大することができます。そうすれば、不動産とともに受託者が受益者のために活用することが可能になるのです。
育てた資産を守りつなぐ
不動産は、管理に大変手間がかかる財産です。高齢化に伴って判断能力が落ちたり、世の中の仕組みが大幅に変わって対応できなくなる恐れがあります。そういった際に親愛信託®を活用すれば、受託者に管理してもらうことで、子や孫や後継者にスムーズに財産を引き継ぐことができます。
信託財産は、管理する人はしっかり固定できますし、財産権も自由に動かせるので、相続税対策をすることもできます。
昔から「不動産は法人にしているから大丈夫」という話をよく聞きます。しかし私たちから見ると「本当に大丈夫?」と思うことも少なくありません。確かに不動産そのものは法人が所有しているので、相続になることはないです。でもその法人のほとんどが株式会社であることが多いです。株は相続や相続税の対象になります。不動産の所有法人は株価が上がることが多く、実際の対策はかなり難しいのではないでしょうか?そういう場合には自社株を信託することで、相続と相続税対策が可能になります。
NISAは「資産を育てる」、親愛信託は「資産を守り、つなぐ」制度です。不動産オーナーにとっては、金融資産と不動産をどのように組み合わせ、将来の承継トラブルを避けるかが大きな課題となります。せっかく築いた不動産と金融資産をただ相続させるのではなく、親愛信託を活用することで「安心できる資産戦略」へと進化させることが可能となります。
監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)
よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長

略歴
2015年行政書士まつおよう子法務事務所開業。
16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。
著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。
(第1143号 2025年10月16日号より 引用)
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