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想いを叶える親愛信託 68

更新日:4月23日

第68回「信託の代表的な活用方法」




メリットは名義と財産権の分離


 信託を紹介したいが、自分の周りには必要としている人がいないのでチャンスがなくて…という方がいらっしゃいます。しかし、おおげさにいうと信託の必要がない人はいません。人は必ず何らかの財産は持っているので、信託を活用する方が良いですが、他の方法でも解決できる人もいます。信託の活用方法がわかり、最大限の活用ができれば、提案できる人は身近にたくさんいるはずです。


 信託の最大の特徴は、名義と財産権に分けられるということです。さらに相続税は受益権にも所有権と同じようにかかりますが、相続の手続きがいりません。財産の価値が高く、財産承継や事業承継を行うことに躊躇している場合や、相続人の中に相続の手続きができない人、相続に関わってほしくない人がいる場合などです。


 認知症対策だけでなく信託が活用できる事例をいくつかご紹介します。不動産を所有していて法人化し、不動産が法人所有になっている場合は、不動産の財産承継ではなく、法人の事業承継の対策になります。不動産保有会社の場合、一定の条件を満たしている場合を除き、事業承継税制が使えません。親族だけで不動産を保有している法人の場合には事業承継税制は使えませんが、親愛信託を活用して対策を行うことができます。


 不動産保有会社の株の承継対策として、一人息子にその会社を継がせたいケースがあります。不動産は将来価値が上がる可能性が高く、株価が上がることが予想されます。不動産自体を息子に承継するよりも法人の株を承継する方が、株価対策しやすいメリットがあり、法人化するだけで安心している場合がありますが、それだけでは根本的な対策にはなりません。早めに息子に財産を譲っておき、税の負担が少なくなるようにしておく必要があると思います。株式を息子に引き継ぐ場合悩むのが、株を渡すタイミングです。株価が低いうちに渡したいと考えますが、息子の能力も含め経営できる環境が株価の下がる時と同時に来るのを待つうちに、タイミングを逃してしまうことがあります。そうならないように親愛信託を活用します。


株の円滑な承継が可能


 具体的には株を持っている親が委託者となり、そのタイミングで息子に経営を任せられれば、息子を受託者として、信託契約を締結し、親は受益者となり株の財産権を持ち、株価の下がったタイミングで受益権を息子に贈与又は譲渡します。株価が低いタイミングで、息子が経営できる環境にない場合には、自己信託を活用します。親が自己所有の株式を信託財産として、自分が受託者となり、議決権を行使できるようにしてそのまま経営を続けます。そして、受益者として持っている株の財産権を株価が低いうちに息子に贈与又は譲渡します。このように親愛信託を活用して、経営を譲るタイミングと財産権を譲るタイミングを分けることができるのです。


 経営しない人にも財産権を渡したい場合は、株が所有権のままだと株そのものを渡す必要があります。そのため株の持ち主は議決権も持つことになります。親愛信託で経営者を受託者にし、経営に携わらない親族などに受益権を渡すことができます。


 例えば妻と子が3人いて、長男に経営を任せる場合、長男を受託者として信託を締結し、自分は受益権を持ち、自分が亡くなった後に受益権を妻と子3人で均等に承継できるようにしておきます。そうすることで経営に携わらない妻や子にも財産権を渡すことが可能になります。次にすでに妻が認知症になっている場合や自分で財産を管理できない子がいる場合にも親愛信託を活用できます。経営は受託者である長男が行い、受益者は利益を得るのみという立場になるからです。


 また、再婚する場合に後妻には会社経営に携わってほしくない場合にも対応できます。相続の手続きが必要なくなるため、会社の株以外の財産を後妻に与えるようにしておくことで、もめごとも防げます。このように親愛信託を活用すれば様々な対策が可能です。





監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1125号 2024年11月16日より 引用)







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