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思いを叶える親愛信託 32

第32回「争いごと対策だけではない~もし信託することが間に合わなかったら」





自分に適した方法で 早めの行動が肝心

 

 贈与や譲渡、後見、遺言、死因贈与、死後事務委任、生命保険、そして親愛信託など、財産管理や財産承継の方法は様々あります。自分が生きている間にできることと、亡くなった後にできること、それぞれ誰がどのような方法で何ができるかということが違うため、どれが優れているということはありません。自分に一番合っている方法を探し、早めに行動することが肝心です。


 決めつけることなくすべて検討してみるといいと思います。ただ…なかなかどれが自分に一番合っているのか決められないことが多いので、一番、柔軟な対応が可能となり、将来の状況の変化にも対応しやすい親愛信託が使いやすいということで、信託をお勧めするのです。


 しかし、間に合わないこともあります。情報がなく、そんな方法があることを知らなかったということにならないように、一人でも多くの方に親愛信託の存在を知ってもらえるように、この記事も読んでもらえたらと思います。


 不動産に関して不動産管理会社に管理をお願いするように、財産に関して自分のことをよく分かってくれている人に管理をお願いして、さらにその財産を誰に渡すか決めておくのが親愛信託です。

 不動産管理会社が自社で全て行うのでなく、内装を修理するときには内装屋さん、屋根が壊れたら屋根屋さんに依頼し、保険は保険屋さんにお願いするということになると思います。親愛信託も同じで、自分で全て行わないといけないのではなく、その財産について窓口になって手続きをする役割になります。


 財産の持ち主は別にいるので、管理や処分などをするための人を決めておくということです。すごく便利ですが、分かりにくいということと、自分の思った通りに決めておけるということが逆にいろんなことを決めないといけない(もちろん決めないままスタートすることもできます)ということで、間に合わなくなるケースも出てきています。


財産と一緒に 気持ちも引き継げる親愛信託


 いろんなことを決めたいという希望があり、大切な財産なので、完璧に決めようとして時間がかかってしまい、その結果、信託を実行することなくこの世を去ってしまったということもあります。「信託を提案しようと思っていたけど亡くなってしまった」「提案していたけど実行する前に亡くなってしまった」となってしまってもできることがあるかもしれません。


 生前に何をしたいのかをきちんと誰かに話していたら、残された人がそれを実現してあげることができるかもしれません。信託や遺言が争いごと対策として考えられることが多いですが、そうではないケースもたくさんあるはずです。


 遺してもらった財産を残された人がどうするかというときにも親愛信託が使えます。財産を引き継いでもどうしたらよいか戸惑ってしまうという場合や会社の株や会社に関係する不動産を引き継ぐことになり、「関係する人たちのことを考えると自分はふさわしくないのではないか」、もしくは「財産を独り占めしていると誤解されるのではないか」と、財産を承継しても、元々自分が築き上げてきたものではない場合は複雑な思いです。

 その時に引き継いだ人がその財産を信託財産にして、遺した人の想いを形にしてあげることが親愛信託を使うとできるのです。


 信託財産にするとその財産自体は誰のものでもなくなります。その仕組みを利用するのです。もちろん持ち主はいますが、財産自体は誰のものでもなくなるのです。そして、残された人の生活も守りながら亡くなった人がやりたかったことを引き継いであげる仕組みを信託で作ることができるのです。


 そのために必要なのは、まず「親愛信託の存在を知っている」ことと、「亡くなった方が何をしたかったのかしっかり把握している」ことです。いつ亡くなるかわからないので、日頃から信頼できる人に自分の気持ちをしっかり伝えておくことが大切です。そうするとたとえ間に合わなかったとしても、財産と一緒に気持ちも引き継いで叶えてくれるはずです。


監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1065号 2021年11月16日発行 より 引用)






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