平均成約価格は土地が14・2%、戸建が8・4%、マンションが9%と全分野で上昇。19年以降、価格上昇による鈍化が続いている。
ことし第1四半期(1-3月)時点での成約数は、土地と戸建はプラスと好調。一方マンションはマイナスと変化が現れた。道内外の不動産会社に聞くと変化の背景が見えてきた。
「潮目が完全に変わった」。道内の大手不動産業者はこう語る。22年夏ころは仕入れた先から売却が決まっていたが、秋以降は一転して鈍化。現在まで冷え込んだ状態が続いている。
原因は住宅を購入したい層が買い切ったためと推測。コロナバブルは完全にはじけたと嘆いた。
別の道外大手不動産業者は、売却相談は増加傾向で市場のタマ不足はないと語る。「むしろ在庫がだぶついている状態。22年度末は前年同期比で倍あった」と説明。在庫量が増え、成約率も下落したと話した。
1 在庫過多のMS
ことし第1・四半期の中古マンション成約数は前年同期比で13・9%減。道外大手不動産業者によると、3000万円台以下の物件は活発に動くが、4000-5000万円台の動きは鈍化したのが背景にあると語る。
新築も中古も在庫は豊富だ。「徒歩5分圏内など好立地物件はすでに成約し尽くしている。現在の在庫は条件が良くないのに高すぎると判断される」(同)。
高価格物件を求める富裕層も、金利動向や円安などの金融不安を背景に様子見に入り、市況は鈍化。「問い合わせは多いが慎重になっている印象。今は買い時でないと考えるようだ」(同)。
2 戸建市況は適正化か
中古戸建は「土地、資材の影響で高騰する新築戸建は買えないという顧客が流入し、伸びた」(道外不動産業者)。ことし第1・四半期の成約数は速報値で17・8%増と好転。価格は同49万円下落した。
3月以降に新築建売の在庫価格を下げる業者が増えたほか、完成物件が出回ったため現在は停滞。札幌西エリアに拠を構える売買仲介業者は「売れ残った建売を50万、100万下げたという話はざら。似たような価格なら新築がいいとなる。完全な買い手市場」と話す。
ただ、需給バランスが取れ始めたとの見立てもある。ここ数年の需要過多な状況が適正化し、マーケットは落ち着きを取り戻したとも考えられる。
3 土地は横ばい
土地のことし第1・四半期の成約数速報値は前年同期比で16・9%増、平均成約価格は243万円増と好調だ。依然高価格で推移するが、22年までの上昇幅を考えると横ばい基調。天井が過ぎたと考え、売却案件が増えている。
「遠からず下落するのでは」「すでに土地価格を下げた業者もいる」など価格下落からの流通増加を予期する業者は少なくない。
ただアフターコロナでインバウンド復調の兆しも見られ、油断は禁物だ。ある売買仲介業者によると、3月頃から中国、台湾などの業者が散見するという。円安を背景に海外業者や観光関連産業の土地取得が活発化すれば、高止まり状態が続く可能性もあるとした。
4 収益は好調
収益物件は非常に好調。特に札幌駅付近の大型案件などに人気が集まる。インバウンドとの取り引きも活性化。商業用地を狙う国内企業も多い。
「富裕層は資産価値のある中央区の好立地を求めており、高くても条件が良ければすぐ売れる。逆に条件が悪ければまったく動かない」(道外大手不動産業者)。
5 今後の予測
今後も高止まりのまま市況の鈍化が続くと見立てるのは道内大手不動産業者だ。「北広島や江別、恵庭も高止まりの状況。しばらくこのまま推移するのでは」。
一方徐々に価格が下落し市場が落ち着くとの予測もある。「これまでが異常な状態。今は売主と協議し、適正価格をつけるべき段階にある。在庫を優良物件に仕上げて市場へ流して活性化をうながしたい」(道外大手不動産業者)。
(第1094号 2023年5月1・16日合併号 1面より)
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