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想いを叶える親愛信託 87

  • 20 時間前
  • 読了時間: 4分

第87回「信託財産の管理、運用はどうする?」



受託者の義務と受益者の注意点


 信託財産の管理権限は受託者にあります。受益者は信託財産に対して、受益権を持ちます。通常の所有権であれば所有者の自由に処分することができます。しかし、信託財産を受託者が自由に処分することはできません。受託者は、信託の目的を達成する義務を負っているためです。さらに、受益者のために誠実に信託事務を行わなければいけません。


 信託財産は原則として、差し押さえることはできません。なぜかというと実質的な財産権を持っているのは、受益者だからです。受託者の名義だからと言って、受託者個人が債務を負い、差し押さえが実行される状況になったとしても信託財産は受託者のものではないので、差し押さえの対象外となります。


 ただし、受益者個人が債務を負った場合は注意が必要です。この場合、信託財産そのものは差し押さえられなくても、受益者が持つ「受益権」が差し押さえの対象となります。そのため、「信託財産にしていれば、どのような債務があっても安心」というわけではありません。 


運用、管理の方法は自由に決められる


 不動産信託における資金ショート対策として、信託財産は民法で規定されている所有権とは異なるため、運用や管理の方法を、当初の委託者が契約などの信託行為の中で自由に決めることができます。


 例えば、信託財産が不動産であるケースですと、受益債権を全て行使して、不動産から発生する収益を受益者がすべて受け取ってしまうと、信託財産の中の金銭、いわゆる受託者の管理する手元資金がゼロになってしまいます。そうなると、固定資産税の支払いや、将来の修繕などに充てるべき費用が出せなくなってしまいます。


 そこで、信託契約の中に以下のような条項を規定しておきます。「信託不動産に対して、信託金銭が〇%になるまでは、受益者は金銭を受領することができず、〇%は必ず信託金銭としてプールしておかなければならない」。このように定めておけば、一定の金額は必ず信託金銭として残るため、不動産の維持・管理費用を滞りなく支払うことができます。


契約を途中で変更することも可能


 世の中の状況に応じて、受託者と受益者で話し合い、契約を変更して、その割合を変えることもできます。委託者が認知症になったときの対策として、信託契約書に別段の定めとして「受託者と受益者の合意で契約の変更ができる」としておき、さらに受益者の認知症になったときのために受益者代理人を選任しておきます。そうすると受託者と受益者代理人の合意で契約を変更することができます。


 不動産に関する費用の支払いだけでなく、受益者の生活費や医療費などの費用の支払いに充てることができるというようにしておくこともできます。実務を行っていて、委託者のご要望としてあるのが、信託財産を祭祀の費用に充てたいというものです。祭祀は財産ではないので、それ自体を受託者の義務とすることはできませんが、祭祀にかかる費用の支出を受託者の義務とすることは可能です。


 例えば、不動産を売却することが目的のケースで、無事に売却できて金銭に換わります。その信託金銭を受益者ですべて配分すると、信託財産がなくなるので信託は終了します。その時にすべて配分するのではなく、一定期間の祭祀が行える分の金銭は残しておいて、受託者が祭祀に係る金銭の支払いをしていきます。毎年いくら必要で、それを何年間行うということを信託契約で決めておけば、誰が祭祀の費用負担するのかともめることもありませんし、いつまで続ければいいのか迷うこともありません。


 委託者は自分の遺した財産で、どのようにいつまで行ってほしいのかをきちんと伝えておきそれを実行してもらうことができます。


 もしも、信託を活用することに躊躇している方がいたら、自分がいなくなっても実行して欲しいことを信託財産を使って行ってもらうことができるということも伝えてあげてみてください。もっと世の中に信託を活用する人が増えると思います。




監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。



(第1156号 2026年6月16日 引用)








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