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想いを叶える親愛信託 83

  • 3 日前
  • 読了時間: 4分

第83回「信託できる財産・できない財産」



ほぼ全ての不動産が信託の対象


 信託財産として一番需要が多いのは、不動産です。自宅、アパート、月極駐車場、店舗、倉庫など、ほぼ全ての不動産が対象になります。ただし、不動産を信託財産にした場合、損益通算ができない、赤字が繰越せない、空き家の3000万円控除が受けられないなど注意しないといけないこともあります。


 不動産を信託すると、名義は受託者に変わります。そのことを第三者に対抗するには登記する必要があり、登記には「信託目録」が付されます。未登記の不動産は信託財産にできますが、登記しなければ名義が受託者に変わったことを第三者に主張することができません。


 信託不動産を売買するときの媒介契約は受託者とします。そして、売買契約をするのも受託者です。売却代金の着金口座は受託者名義で受益者の物である信託口口座になります。不動産の売却だけなので口座は必要ないという方がいますが、売却した金銭を管理するために信託口口座は必要です。


不動産の賃料や売却金も信託財産に


 不動産そのものを信託すれば、果実である「賃料」も信託財産として受託者が受領します。管理委託契約を結ぶ場合も、元の所有者である委託者ではなく受託者が貸主になります。「敷金・保証金」も信託財産とする必要があります。所有者の判断能力がしっかりしているうちに信託しておくとスムーズに進みます。顧問税理士がいれば協力してもらうと受託者が管理するようになってもきちんと引き継ぎができているのでお互いメリットがあると思います。これが相続との大きな違いだと思います。


 「信託不動産を売却したときの売却代金」は信託不動産が信託金銭に変わっただけなので、売却後の現金も信託財産として受託者が管理し、受益者への給付や次の投資に回すことが可能です。車や貴金属、骨とう品、美術品、ペット、自社の株式などの動産も信託財産にできます。


 次に、実務上「信託しにくい」財産をいくつか紹介します。まず農地です。信託財産にできますが信託登記ができないので第三者に対抗できないのです。次が預貯金です。預金そのものは譲渡禁止債権なので、信託財産にはできず、預金から引き出して、金銭を信託し、新しく開設した信託口口座に金銭を入金する必要があります。


 不動産業の現場で多いのは、信託不動産の売却代金を「とりあえず受託者個人口座へ」入れてしまい、後からもめるケースです。信託は分別管理義務があるので、どの口座で管理するかは大事です。ポイントは「プラスの財産で特定でき、管理・処分の対象になり得ること」です。登記登録できるものは、受託者名義にする必要があり、できないものでも分別管理が条件になります。


 信託できない財産は「マイナスの財産」いわゆる借金や債務と「身分」や「一身専属権」に関わるものです。たとえば「年金受給権」「生活保護受給権等」「親権・監護権などの身分権」「資格や許認可(地位そのもの)」、許可、免許、士業資格などは、本人に帰属する地位であり、信託財産にはなりません。


しっかりしたスキームで財産を守る


 実務で最も重要なのは、「信託できるかどうか」よりも、信託の目的を達成できるスキームになっているかです。信託できる財産であっても、管理方法が不明確であったり、受託者の権限が弱すぎたり、逆に強すぎて歯止めがないと、不信感や争いの原因になってしまいます。


 親愛信託は、財産を守る制度であると同時に、自分や大切な人を守る制度でもあります。だからこそ「どの財産を信託するか」「どれは信託しないか」を整理することが、信託を実行するうえでの第一歩になるのです。皆さんが考えているより多くのものを信託財産にすることができます。大切なものがあれば「信託財産」にできるかもしれません。その時はぜひご相談ください。



監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1149号 2026年2月16日 引用)







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