想いを叶える親愛信託 66
- oikaway4
- 4月16日
- 読了時間: 4分
第66回「空き家にしないための話し合い」

不動産を将来どうするか事前に決めて伝える
総務省が発表した2023年10 月時点の「住宅・土地統計調査」の集計によると、全国の空き家は900万戸となり、30年前の約2倍になっています。今後も空き家は増え続けていく傾向にあり、相続登記の義務化や「改正空家特措法」で「管理不全空き家」に指定されると固定資産税がこれまでの6倍になってしまう可能性があるので、空き家を放置することを避ける人が増えるでしょう。
様々な対策が考えられますが、大切なのは事前の対策です。空き家になるということは、住んでいる人がいなくなるということなので、いなくならないように計画をしておくことが必要になります。本来であれば、購入した不動産を「将来どうするのか?」ということを購入した時に考えておくべきなのですが、なかなかそこまで考える人はいませんし、途中で状況も変わります。
購入目的が「自分の住む家」「投資物件」「将来の住む家」など、目的が違えば将来どうするかというのも変わってきます。自分がその不動産をどうしたいのかをきちんと決めて、それを引き継ぐ人に伝えておくべきですが、なかなかそれが実現できていません。
親愛信託は自分の気持ちを引き継ぐ人に伝えることができ、それを法的に決めておくことができる仕組みです。引き継ぐ人も自分が引き継いだ後どうすれば良いのかを直接聞くことができるので、お互いに話し合い、曖昧にならないように決めておき、疑問に思うことは質問し解決しておくということをした上で親愛信託契約を行います。
そのような話し合いの機会を持つことが大切で、それが空き家対策にもなります。その不動産が空き家にならずに有効活用できるように不動産の持ち主である委託者が受託者に託すのです。自分の想いをきちんと伝えていれば受託者は迷うことなく決断することができます。
空き家にならないようにすると口で言うのは簡単ですが、実現または持続するのは大変です。委託者のこれまでの経験などをきちんと受託者に伝え、これまで失敗したことは繰り返さないように、成功したことは維持していけるように直接話し、それを委託者がそばで指導できる元気なうちに信託契約を締結しておきます。
委託者と受託者が話し合い、財産を管理
親愛信託は認知症対策だけではないのです。老後ではなく、早めに信託をスタートさせておいて、協力しながら将来の対策を取ることができます。財産管理会社として法人を設立して、不動産をその法人が所有にするという方法を今までは取ってきたかもしれませんが、法人を設立しなくても、それと同じような形を取ることが可能になります。
所有者が信託行為をすることで委託者兼受益者となり、受託者と話し合いながらその不動産の管理や運用、処分をしていきます。実際に手続きをするのは名義を持っている受託者です。委託者兼受益者だけの意見ではなく、受託者は将来を見据え、管理・処分しやすいように委託者と話し合いながら、信託財産を管理することができるのです。
遺言だと、どうしたら良いか分からなくても聞く相手は亡くなっているので、話し合うこともできません。「3回忌や7回忌が終わるまでは処分しない」というようなことを望んでいるかどうか聞くことができないので、引き継いだ人は無難な道を選ぶことで、例え空き家になっても多少費用が掛かっても「自分のせいではなく、故人の意思を守った」気分になるので、空き家になってもそのままにしようとするのです。
自分が購入した不動産は将来どのように管理をして、どのタイミングや条件で売却するのかしっかり計画を立て、それが実現するようにしておくべきです。そのための手段としての親愛信託の活用です。
言いにくい、聞きにくいとお互いが気を使った結果、本音を聞いたり言ったりできず、中途半端な財産管理になり、処分もできず空き家になってしまうということにならないように、しっかり話し合いをして、それが実現できるように親愛信託契約書を交わしておくのです。
監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)
よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長

略歴
2015年行政書士まつおよう子法務事務所開業。
16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。
著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。
(第1121号 2024年9月16日より 引用)
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