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想いを叶える親愛信託 73

  • 執筆者の写真: oikaway4
    oikaway4
  • 5月7日
  • 読了時間: 4分

第73回「大規模修繕の必要性と信託の活用」





修繕費は計画的に


 不動産を所有している場合、将来的な問題に「大規模修繕」があります。自宅や戸建て住宅は、年数が経てばリフォームやリノベーションなどが必要になってくるでしょう。物件の状態によっては、大規模修繕はせずに「解体」という選択肢もあると思います。


 重要なのは「計画」を建てておくことです。事業を営んでる場合でも普通は「事業計画」を立てます。その場しのぎの行き当たりばったり経営では、いつか必ず限界がきてしまいます。


 不動産所有者が信託を検討する際の目的や悩み事で多いものの一つに、「認知症対策」があります。その際、不動産所有者としての計画つくりの一つに信託契約が上げられると思います。所有者が認知症になった時に備えて、あらかじめ信託契約をしておくことが重要です。


 問題になりがちなのは、将来必要になるであろう「大規模修繕」です。大規模修繕をしなくてはならなくなった場合、「借入に対して、信託で対応できます」という提案があります。ただ、果たして借入れを信託で対応するものなのでしょうか?専門家によっては「将来の大規模修繕が必要になったときのために受託者が借り入れできるように信託を締結しておきましょう!」と安易に進めているケースがあります。しかし信託内借入は慎重に行うべきでしょう。リスクが伴うためです。


 私個人やよ・つ・ばグループは、信託内借入はこれまで一切行っていませんでした。問題が発生するのは信託契約当初や信託内借入時ではなく、十数年後、もっと言えば何十年後なのです。委託者兼受益者にとっても受託者にとってもリスクは最小限にしないといけません。将来、「信託しない方がよかった」とならないようにする必要があります。そのため、我々は基本的に信託内借入をしない方針を取っています。


信託内借入れは大丈夫?


 しかしここ数年、金融機関は積極的に信託内借入を勧めています。実施の際には債権者の同意が必要になるので、債権者である金融機関が自信を持って勧めてくる場合は大丈夫でしょう。あとは債務をだれが背負って、誰がどこから返済するのかを考えなくてはなりません。金融機関は、担保が取れていて債権が回収できればよいと考えます。当然、自分たちに不利なことはしません。


 お金を借りる側が不利にならないようにするためには、当事者が将来のことを想定して、リスクは何があるのかを考える必要があります。


 信託財産に関して、受託者は信託財産の範囲での責任を負います。しかし、信託内借入に関しては、信託財産だけでなく、受託者の固有の財産からも返済しないといけない「無限責任」を負います。借入に対する返済計画がうまくいかなかった場合は、受託者は自分自信の財産から返済しないといけない恐れがあるのです。それも納得の上で借入をし、さらに受益者が死亡した時、相続税の計算をして、債務控除が確実にできる借入になっているかどうかを見なくてはなりません。


 このように信託内借入れには論点がたくさんあり、検討事項が多々存在します。どうしても必要な場合は、検討して信託内借入を活用するケースもあると思います。以前よりも不確定要素が減ったために、取り組みやすくなったという背景はあります。ただ、リスクが大きいことは変わりなく、率直に言って安易にするべきではありません。


 そもそも大規模修繕時に多額の借入が必要になるというのが問題です。日ごろの収支や積立が正しいのかということを判断、検討する必要があります。


 これまでの大規模修繕を実行できる資金が準備できていないのに、多額の借入をして、返済を進めながら次の大規模修繕まで備えられるのでしょうか。もしかしたら、大規模修繕ではなく解体を検討する必要があるかもしれません。


 先日、タワマンの将来に備えて、積立金を投資するという話題が出ていました。それも方法のひとつだと思います。安易に「大規模修繕=借入」ではなく、計画的に不動産を守っていく必要があると思います。





監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1133号 2025年4月16日より 引用)







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