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想いを叶える親愛信託 74

  • 執筆者の写真: oikaway4
    oikaway4
  • 1 日前
  • 読了時間: 4分

第74回「事業承継につかえる信託の活用」




後継者の有無で変わる活用方法


 後継者を誰にするのか・・・?という課題は多くの方が抱えている問題だと思います。候補者がいたとしても課税の問題があって、なかなか思い通りに進められない…という方もいるのではないでしょうか?さらに、中小零細企業で問題になるのは、創業者の個人資産が事業に関わっていることだと思います。その問題を解決するのが親愛信託です。


 後継者が完全に決まっている場合には、事業承継税制の活用をお勧めします。事業承継税制を活用して計画通りに承継することができれば、贈与税がかからずに事業承継が完結します。ただし、色々な条件や提出書類があり、期間も年単位でかかるのがネックです。万が一計画通りにいかない場合は、その時に猶予されていた贈与税がかかります。


 後継者をどうするか迷っているとか、後継者がおらずにM&Aを検討している場合には、事業承継税制の活用は不向きです。親愛信託は将来の不確定要素が多ければ多いほどメリットがあります。つまり、将来どうするか迷っている場合は親愛信託を活用してほしいです。なかなか後継者を決められず、ご自身が高齢になり、いつ判断能力が危うくなるか分からないのは皆さん不安でしょう。そうなる前に事前に準備し、自分が認知症になった際、意思が引き継がれるようにするのがベストです。


株式を信託財産にするメリット


 資産管理会社として株式会社を設立している場合には、その株式会社の株式を信託財産とします。自社株を信託するメリットは、事業を継がない人にも会社の財産権を渡せることです。株式を信託すると、株の議決権を受託者が持ち、財産権は受益者が持つことになります。


 株の財産権は、配当を受領したり、売却したりした時の金銭を受領する権利となります。例えば有能な従業員を受託者にして、議決権を行使して経営を行い、受益権は親族で持ちます。親族はオーナーとして事業を引き継ぎ、従業員が経営をするという形です。業績が良ければ役員報酬をたくさん出し、親族にはしっかり配当を出すようにしておけば、全員が利益を得られるというわけです。


 親族が継いでくれる場合には、受託者を親族にして、経営を任せるようにすればよいでしょう。株を所有権のまま渡すと、譲渡後は渡した人の自由になります。もし取り戻す場合には、渡した人の了承が必要です。


 また、渡すとき・戻すときは贈与税の対象になります。でも親愛信託を使えば、所有権で株を渡すのではなく、受託者を指定して株の管理権限を渡すだけなので、贈与税はかかりません。受益権を渡したときに贈与税の対象になるので、受託者を変更しても課税の対象にはならないのです。


 受託者が適任でなければ、途中で変更することもできます。


 例えば子供が数名いて、誰に法人を継がせようか迷っている場合、候補者の誰かを指名し、試しに経営させ、様子を見ることも可能です。

 長男に継がせることが決まっていて、長男だけに株式を承継すると不公平になることもあります。


 例えば株価が高くて、長男は株式を相続し、他の財産が全くもらえないけれども、他の兄弟は現金などの自由になる資産を相続したケースなどです。この場合は、長男の株式による資産は価値は高いけど自由にならないというケースが想定できます。


 財産が法人株しかない場合は、長男だけが財産をもらう形になります。どのケースも不公平感はありますが、それも親愛信託を使えば解決できます。


 受託者の長男が経営者になり、他の子供たちは均等割合で受益権を持つのです。そうすれば長男が他の財産をもらえないわけでもないし、長男だけが財産をもらうことにもなりません。


 親愛信託を活用して、受託者が持つ経営権と受益者が持つ財産権を分ければ、事業承継の様々な悩みを解決することが可能になります。





監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1134号 2025年5月1・16日より 引用)







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