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想いを叶える親愛信託 15

更新日:2023年2月16日

第15回「不動産賃貸業における事業承継」


慎重な検討が必要な収益不動産の事業承継



 新型コロナウィルス感染症の流行により、世の中がずいぶん変わりました。緊急事態宣言が解除になりましたが、まだまだいろいろなところで影響が出てくる可能性があります。


 収益不動産をお持ちの方も他の業界と同様に、現状に対する対策も必要ですし、将来の方向性も考える必要があります。今回の新型コロナによる経済などへの影響は、現状を見直すいい機会になったのではないかと思います。「これからの人生をどう生きていくのか」「収益不動産や財産をどのようにするのか」「今後、物件を増やそうと思っている方」「どこかのタイミングで後継者に引き継ごうと思っている方」などそれぞれだと思いますが、考えが変わった方もいるのではないでしょうか?


 まだまだ後継者や子供に譲るのは早いと思っていたが、予想外の状況になりこのまま自分が収益不動産を持ち続けるより、譲ること検討してもいいかもしれないと思われた方もいるのではないでしょうか? 不動産を所有している方は、金銭など動かしやすい財産を持っている方より慎重に事業承継を検討する必要があると思います。


 まだ、もう少し現役を続けるつもりだったけれども、新型コロナで経済が落ち込みいつ回復するのか見通しがつかないので、これを期に後継者に不動産もしくは事業を譲ろうと考えている方は、ぜひ親愛信託を活用してください。不動産そのものを渡してしまうと贈与税や譲渡所得税がかかります。そして、渡してしまったものを元に戻すのは大変です


 そこで、親愛信託を使い、たとえば現在の不動産オーナーのお父様が信託契約を息子と交わします。所有者であったお父様は「委託者」兼「受益者」となり、息子は「受託者」となります。そうすることで、贈与税や譲渡所得税はかからず、登録免許税は土地が評価格の1000分の3、建物が1000分の4で済みます。そして万が一、受託者がきちんと管理できないようであれば、受託者を変更することもできます。


 受託者を自分にすることも可能です。しかし、名義を自分にしてしまうと、受益者と受託者が全く同じになってしまい、その場合は1年で信託契約が終了してしまうという信託法のルールがあるので、その時には1年以内に受託者を変更するか、受益権の一部を誰かに渡す必要性が出てきます。

 

 名義を自分に戻す確率は低いと思いますが、いざとなれば戻せるということになれば、名義を変えることのハードルが下がります。

 親愛信託を使わずに不動産や法人の株式そのものを渡してしまうと、元に戻す時にまた沢山の税金がかかってしまいますし、渡した後継者が「返さない」と言えば、すでに後継者の物になってしまっていることから、返してもらうことができなくなるので、よほどの覚悟がいります。


ベストなタイミングで不動産を後継者に渡す


 税金の面をさらにお話しすると、今後も相続税対策をしたいけれど、高齢のため、借入をして不動産を増やしてもいつまで管理できるかわからないので、管理や資産保有法人の運営は後継者に任せたいというときに、ご本人が借入をして、その借入をした金銭を信託財産とし、その金銭の名義人となる受託者になった後継者が信託財産となった金銭を使って新しい不動産を建てるということもできます。


 いつまで自分自身で不動産の管理や運用ができるかわからないという不安を抱えながら所有しているより、自分の一番いいタイミングで余裕を持って後継者に渡すことが大切だと思います。

 ぎりぎりまで頑張ってしまうと、いいタイミングでなくても渡さないといけなくなります。


 これは、収益不動産そのものでも資産保有会社でも同じです。資産保有会社が株式会社の場合は、ご自身が持っているその会社の株式を信託することになります。そうすると株式の名義が後継者に変わり、議決権を後継者が行使することになります。

 何事も計画的に早めに実行することが大切です。


監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト代表


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1036号 2020年6月16日発行 より 引用)




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