2023年4月に公立化する旭川大学に地元不動産業者が反応している。過去5年で生徒数が増加傾向にあるため将来の賃貸需要をにらんで、大学がある永山地区でアパート物件の購入やリフォームする動きが出始めた。25年には1学年定員100人の新学部が入る分校舎の開設を控える。設置場所についていまだ不透明だが、市は中心市街地か現キャンパス内で検討する。新たな人流を生み出すだけに、その選択に注目が高まっている。
志願者が3倍に 学生向け賃貸の需要増か
「旭大近辺のアパートが動き出した」。市内の不動産業者はことし、永山地区で木造、2階建て賃貸アパートの購入を決めた。キャンパス周辺は賃貸住宅が多く立ち並ぶが、いずれも築年数が古い物件ばかりで空室も目立つ。内装リフォームやネット環境を整えて他と差別化を図り、学生向けの物件として新たな入居を迎え入れるという。
別の賃貸仲介業者は住宅需要を見通し、既存オーナーに室内リフォームを提案していくとする。新規の賃貸供給については、建築費の高騰などを理由に「多くはない」とみるが、大学周辺にはまだ土地が残っているため「アパートの新築があってもおかしくない」と話す。
旭大近辺の賃貸需要が熱を帯び始めたのは、私立大から公立大に変更し、学生数が増えると見込んでのこと。過去5年の入学者数を見ると、18年度の入学者数は経済学部と保健福祉学部合わせて定員200人に対し、164人だった。その後、やや増加するも21年度まで190人台と定員を割れが続いた。
しかし、同年度に市議会で予算が承認され、本格協議に入ったことを受けて志願者数が増加。22年度の全学生数は221名となった。そのうち近隣に住居を借りる学生は2割程度だった。
北海道地価研究所・石川陽三不動産鑑定士は「名寄市立大学も公立化で生徒数が増え、周りにアパートが張り付いた。旭大が上川中部の若者を引きつけられれば、札幌に向かう人たちを引き留めるダムになるかもしれない」と期待を寄せる。
新キャンパスは「まちなか」案も
地域デザイン創造学部の新設に伴う分校舎の開設を巡って、旭川市内で意見が割れている。旭大は当初、現キャンパス内の元講堂跡地を予定地として準備を進めていた。だがことし6月の市議会で、今津寛介市長が市内中心部に新設する可能性を示したことで状況は一変。公立化をまちづくりにも生かしたい市の思惑と、現行キャンパスで教育活動を進めたい大学との間に乖離(かいり)が生じている。
市長の発言が発端で、市民レベルでも候補地を提案する声が巻き上がり始めた。
ある議員は商店街の活性化につなげるため常盤公園や旧「川のおもしろ館」の活用を提案。地元の経済団体の有志からは、平和通買物公園沿いにあるマルカツデパートの空きスペースを活用してはといった意見も挙がる。
候補地を決める市はいまだ沈黙を守る。市幹部は民間や市有地活用の両面から検討していると明かし、水面下では市場調査を進めているようだ。
25年の新学部開学まであと3年。校舎整備や文科省との手続きを考えると年内に決める必要がある。新学部の全学年400人と教職員による昼間人口は市にとって大きな魅力だ。分校舎の場所が不動産市場を大きく左右し、まちづくりに変化をもたらすことにつながる。 (第1079号 7月16日発行 1面より先行配信)
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