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【特別対談】脱炭素化に欠かせない住宅への太陽光発電システム設置普及の課題

J建築システム手塚社長✕シェアリングエネルギー上村社長


「メリットが大きく、安全・安心を担保している事業であることをユーザーや住宅建設業者にもっと理解してもらうことが重要」


 太陽光発電システムの第三者所有サービス(無料設置サービス)『シェアでんき』を全国展開する㈱シェアリングエネルギー(東京都)の上村一行代表取締役ら同社の幹部が来道し、J建築システム㈱(手塚純一代表取締役)が安全・安心な家づくりのために様々な試験・検証を行っている実験棟を視察した。

 視察後、実験棟の一つであるJJJ®-Sunハウス(札幌市南区)において、手塚氏と上村氏が、国のカーボンニュートラル実現に向けた住宅政策が加速する中、『シェアでんき』普及の課題などをテーマに対談した(当日は新型コロナウイルス感染症対策を施した上で実施しました)。


電力小売はやらずに太陽光発電の普及を進めるPPAの専業企業・シェアリングエネルギー


――シェアリングエネルギーの事業展開について説明していただけますか。


 上村 環境問題として脱炭素化というところも当然ありますが、『シェアでんき』は、まず太陽の力で電気を創ることができる状態で自家消費を高めていただきながら、それでも余った電気は地域内で融通・シェアし合うということを目指すということです。

 私どもが他社と異なるのは、電力小売はやらずに太陽光発電システムの普及を進めるPPA(Power Purchase Agreement)の専業企業であるという点です。

 

――手塚代表は太陽光発電、創エネに関してどうお考えですか。


J建築システム㈱ 手塚純一代表取締役

 手塚 剛柔の理論というか、柔のところでソーラーやエネルギー問題、剛の面では建物の耐震性や断熱性など、両方のバランスがとれた安全で安心できる器づくりが大事だと思います。シェアリングエネルギーさんには太陽光発電システムを搭載するための器づくり、その基礎・土台をしっかりした上で創エネ、省エネという問題、電気自動車との連動といったものに取り組んでいただけるのではないかと期待しています。



ユーザーのメリットが大きい『シェアでんき』サービス


 ――全国的に太陽光発電システム設置「0円」を謳っているものが多く出てきていますが、『シェアでんき』のセールスポイントはどういったところなのでしょうか。


 上村 「0円ソーラー」というと全部一緒くたにされるケースが多いですが、『シェアでんき』は初期費用だけでなく、すべてを含めて「0円」で設置が可能です。ただし、そこで発電した電力について自家消費できる無料の枠を超過した分については使用した分だけ電気代として頂くというモデルです。


 一方、「0円ソーラー」と謳う他サービスの中にはリースモデルもあり、初期費用は無料でも毎月リース料が掛かるので購入した場合とニアリーイコールのような状態になります。また、私どもと同じように「0円」で、自家消費した分だけ課金されるというものは本州でもいくつかのサービスがありますが、当社との違いはユーザー様のメリットが大きいというのが1点目。


 さらに動産総合保険、賠償責任保険という形で安全・安心を担保しているところが、他社サービスとの比較で優位だと思っています。


 ――気象条件が厳しい北海道では太陽光パネルを設置する屋根からの漏水などのリスクを回避し、太陽光パネルと同等の屋根の耐久年数を確保するなど安全・安心を担保するため指定屋根材・工法を条件としていますが、施工する側からは自社でやらせてほしいなどの要望もきているそうですが。


手塚 太陽光パネルを屋根に載せた場合、パネルのフレームはしっかりしていても、屋根の工事がしっかりしていないと、10~20年経った時に屋根の下地が腐ってしまい、漏水・雨漏りするという残念な話になってしまいます。あくまでもユーザーが求めているのは長期優良住宅なんですね。それに合致した施工、保証・保険であってほしいと思います。


 ――将来的にシェアでんきで設置した太陽光発電システムはどのように使っていって、シェアリングエネルギー自体はどんなビジネスになっていくのでしょうか。


㈱シェアリングエネルギー 上村一行代表取締役

 上村 基本的に太陽光発電システムを載せさせていただくとその住宅に住まわれているユーザー様と20年間お付き合いさせていただく中で、先程お話したように、発電しながら自家消費率を高めていただき、地域によって特性は違うと思いますが、バッテリーや電気自動車との連携など、エネルギーを軸にしながら生活利便性が向上するようなサービスをさせていただきたいと思っています。


 併せて、まだ法制度の改正も必要なのでその先行きを睨みながらではありますが、余った電力を地域の中で消費できるような世界観をつくっていきます。


 一方で、建物ごとに搭載された太陽光発電システムによって生み出される電力は1軒当たりだと大きな容量ではありませんが、『シェアでんき』として束ねると1つの大きな原子力発電所級の電力を生み出すという見方もできてくるので、あたかも一つの仮想的な発電所のように、電力が逼迫してくるようなタイミングで調整力として使わせていただくという事業を想定しています。


既存住宅でのサービス展開では個々の住宅の現況調査が重要


 手塚 『シェアでんき』普及のネックとなる問題はなんでしょうか。


 上村 一般の方からすると「まだまだ太陽光発電システムは費用が高い」、もしくはFIT(太陽光発電の固定価格買取制度)の買取価格が下がってきているので「もう太陽光は終わったんでしょ」みたいなイメージをもたれている方、一方、熱海で発生したがけ崩れの原因となった大きなメガソーラー施設と屋根に付ける太陽光発電システムを同じと思い「逆に環境に良くないんじゃないか」と感じられている方もいらっしゃるので、そうした誤解を解消する啓蒙活動と、太陽光発電システムを無料で屋根に付けられるサービス自体の認知度を上げる活動を強化していく必要があります。


 あとは、日本に現存する2700万棟の住宅のうち、築30年未満といわれているのが1300万棟くらいありますので、既存住宅に対してもサービスの普及を図っていくという課題もあります。


 ――既存住宅への搭載となると、個々の住宅の現況が問題になりますね。


 手塚 住宅だと木造建築が主になると思いますが、木材の構造的な役目として強度とたわみがあります。これをうまく組み合わせることによって太陽光パネルが載せられる。そこまで掘り下げて取り組むと差別化になると思います。


 既存住宅の現況調査には破壊系と非破壊系がありますが、破壊系は費用が嵩んでしょうがない。当社と東京大学が協力して開発・実用化した『JJJ断熱診断®』ですと、非破壊で現状の建物の断熱性能の見える化、耐震、劣化のチェックを行うことが可能で、その数値を活用したIDA建物総合評価を行うと消費者に分かりやすい「家寿命」を判定することができます。

 既存住宅に太陽光パネルを搭載できるかどうかの判定は『JJJ断熱診断®』の研修を受けた者がインスペクターとして診断を行うという仕組みをシェアリングエネルギーさんでも導入できるのではないかと思います。


 上村 非破壊で建物の状態が分かるということはユーザーさんにとってかなり良いことですね。是非、ご協力いただいて事業を進めたいと思います。


 ――既存住宅での『シェアでんき』サービスの普及はどのように進めますか。


 上村 まず本州の方で住宅リフォームを対象にスタートします。北海道はちょうど対象となる築年数の既存住宅だと無落雪屋根が圧倒的に多いという事情もありますので、課題整理をする必要があると考えています。


 ――今年度の北海道での『シェアでんき』サービスの展開はどうでしょうか。


 上村 全国的に『シェアでんき』サービスを一層拡大させていこうと思っていますが、特に北海道は4年前から重点的に事業展開させていただいておりますので、事業スピードを加速したいと考えています。まずは500棟分の予算を確保して進め、それが消化されるようでしたら次の予算を検討するという状況です。


 また、北海道では搭載する太陽光パネルについて、これまでのネクストエナジー・アンド・リソース㈱に加え、長州産業㈱が製造する国産製品も選択できるにようになりました。さらに、リンナイ㈱のハイブリッド冷暖房・給湯システムの特徴として『シェアでんき』太陽光併設が一番電気料金が安くメリットがあることを打ち出していただくというコラボレーションも行い普及拡大を図っていきます。


 ――本日はお忙しいところ、おりがとうございました。



(第1074号 5月1・16日合併号 11面より)

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