空間作り 私のために
3年に及ぶコロナ禍疲れの拡大が、家づくりにも影響を与えた。趣味や仕事スペースの確保など、1人で落ち着ける空間や家事効率化のニーズが高まっている。
昨年の傾向とことしのトレンドについて、インテリアコーディネーターのプレザント代表・橋谷のり子氏と、道内の工務店やハウスメーカーの担当者らに聞いた。
インテリア実例写真の共有サイトを運営するルームクリップ(東京)は昨年12月、投稿写真データの定量、定性的な分析をランキング化した「RoomClip Award 2022」を発表した。
1位は「パーソナル癒しスペース」で、10位「ヌック(部屋のミニスペース)」を含めたリラックス空間の需要が顕著になった。
一条工務店(東京)が昨年4月に実施した全国の男女1097人を対象としたネット調査では、コロナ禍で在宅時間が増えたのは約63%、その中でインテリアにこだわるようになったのは66%だった。
こだわりたい理由として、20-60代の全世代で「居心地よい空間を作りたい」が1位。20―50代の2位は「気分が上がる」だった。在宅時間の増加で、他人の視線よりも自分の満足や好みを優先する傾向が浮き彫りになった。
橋谷氏は、グリーンやブラウン、テラコッタカラーなどのアースカラーで、家全体を安らげる雰囲気にするのが流行と話す。白やアイボリー系を基調とした北欧スタイルに低めの家具を合わせる4位の「ジャパンディ」もその一環とした。
ミニスペース人気
某大手ハウスメーカーの担当者は、廊下やホールをリフォームして、仕事や趣味に集中できる空間を設置するケースが増えたと明かす。
アルティザン建築工房の武田友子専務取締役・設計室室長は、寝室やリビング、キッチンの一画にパーソナルスペースを作る際「間仕切りはせず、壁紙の色やテイスト、照明を変えて別空間を演出する」とした。
同社の澤田崇準建築士は5位の「推しディスプレイ」との関連を指摘。2畳程度の趣味空間に、お気に入りの家具や小物を設置する人が20―30代を中心に広がったとした。
橋谷氏は10位「ヌック」との関連で「天井をアーチ型や三角にする『下がり壁』にすると部屋を広く見せられる」と説明。低まった箇所をくぐる行為が、狭い空間に奥行きを感じさせる効果があるとした。
またフォーカルポイント(焦点になる場所や壁面)を作り、好きな絵や写真を並べる「推しディスプレイ」の提案も喜ばれるとした。
パーソナルスペースに良質な椅子を置いたり、寝室のライティングや寝具にこだわるなど、癒しを求める動きは多い。
トイレもくつろぎ
武田氏は「トイレをお洒落に」という要望が増えたと語る。ペンダントライトやスリット型の窓、トイレットペーパーを置く飾り棚の設置など、機能性よりくつろぎを求めるのが最近の特徴とした。
橋谷氏も「凝った壁紙や、洗面ボウルをカウンターの上に設置するベッセル型などが人気」と話した。
逆に風呂は機能性を求める向きが強い。家事効率化として「備え付け棚などのアイテムを外して掃除を楽にする。後付けのラックがあれば十分という声が多い」(武田氏)。
収納空間を大きく
「部屋が狭くなっても、パントリーやファミリークローゼットを」というニーズも根強い。
澤田氏は、最近は収納を細分化せずに一つにまとめると語る。「土地や資材高騰から、細かく収納を作ると床面積が増え価格も上がる。玄関や車庫の隣に大きめの収納スペースを確保し、間仕切りなどを工夫してシュークローゼット、納戸など幅広い役目を持たせようと提案する。予算内で十分な収納が確保できると好評」(澤田氏)。
癒しの家づくり
ことしも引き続き「癒し」をテーマとした家づくりが流行すると橋谷氏は予測する。
「パーソナルスペースを好きなインテリアで仕上げる傾向は続くだろう。ペールピンクを基調としたキュートな韓国スタイルが若い世代に好評。北欧スタイルや、青や白を基調としたリゾート感あふれる西海岸スタイルは幅広い年代に人気」(橋谷氏)。
キッチンや風呂だけグレードを上げるなど、8位「ハイプラ買い」も広がるとした。
武田氏は家事効率化として、一日分の食器を洗える大容量食洗機の普及などを挙げた。
(第1087号 2023年1月1・16日合併号 第2部7面 より)
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