コストアップの逆風の中 注目される4月の着工戸数
昨年の賃貸住宅の着工戸数は本道が前年比1・9%減、札幌市が3・5%増と、低調な経済環境の中でまずまずの結果で、今年の市場に期待感を持たせるものだった。ところが2022年1~2月の賃貸住宅の着工戸数はどちらも20%減とスタートは鈍い。そこで、本道および札幌市の今年の賃貸住宅市場について展望した。
毎年、全道・札幌市の着工戸数の半数前後を占める貸家(賃貸住宅)市場。
2021年(1~12月)は全道が1万4909戸・前年比1・9%減、札幌市が8826戸・3・5%増と、札幌市は前年比プラスとなり、全道も微減に収まるなど、コロナ禍も落ち着き、明るい兆しが見え始めたように見えた。
しかし、昨年12月の着工戸数を見てみると、全道が927戸・14・3%減、札幌市が600戸・13・7%減と、少し陰りが見え始めていた。
そこで、今年1月と2月の賃貸市場の着工戸数を見てみると、全道が1・2月の合計で前年より247戸少ない870戸・22・1%減、札幌市が1・2月の合計で前年より143戸少ない395戸・26・5%減(グラフ)といずれも2割以上の落ち込みとなっている。
グラフを見て分かる通り、ここ数年の賃貸住宅の着工推移は、全道・札幌市とも毎年4月に着工のピークを迎え、その後多少の増減はあるものの、緩やかに右肩下がりになっていく傾向にある。グラフの傾きは全道・札幌市とも昨年とほぼ平行に推移しており、このままでは、昨年実績を20%以上下回っていく可能性もある。特に札幌市などでは、賃貸住宅は飽和状態にあり、空室増の対策が必要と言われており、新規物件の増加を歓迎しない意見もある。だが、一定数の新規物件が供給されていかなければ、市場や経済が活性化されていかないことや、ライフスタイルの変化やカーボンニュートラルへの対応など、近年の国の住生活に対する施策は賃貸住宅に向けられており、質の良い新しい物件の供給による新陳代謝は必要なことと言える。
その意味では、今年4月の着工実績が今年の全道・札幌市の賃貸着工戸数が決まると言っても過言ではないかもしれない。
今後は市場よりも高い家賃の設定や収益物件の取得が増加か
賃貸住宅の着工を阻害する要因は、特に札幌圏を中心とした地価の上昇に加え、木材や鉄骨などの資材の高騰、燃料の高騰による運送費の上昇、エコジョーズやエコキュートなどの給湯器などの設備の納期遅れなどなどを含めた建築費の上昇や工期の延長など、コストアップがあり、国内・海外の情勢によって、今後もしばらくは先の見えない状況が続くことが予想される。それでも、建築市場は土地が先行して進んでいくものなので、条件の良い土地が市場に出回れば、それなりに着工戸数は伸びていくものと思われる。
ただ、前述のようなコストアップを勘案すると、やはり利回りは下がっていく。はたして賃貸オーナーにとって、現状で賃貸住宅を建設することが得策か迷うところだ。
そう考えると、住宅そのものの質を上げることや、ファミリー向けなども含めて、家賃を高く設定して、利回りを上げていくことや、既存の賃貸物件を取得して収益を上げるオーナーも増えてきそうだ。
一方で、今年の繁忙期の賃貸仲介の状況は、転勤などの異動も例年に近づいてきたと、まずまずのようだ。また、非対面での入居者付けも定着してきたが、ウィズコロナの進展に伴い、高級な物件などはリアルな来店や内見も次第に増えていくことが予想されるので、新しい物件が供給されれば、入居者付けは順調に進みそうだ。
いずれにしても、前述のとおり、4月の着工実績が注目される。 (第1073号 2022年4月16日号 1面より)
Comments