近年、活況を見せる札幌市内の中古マンション市場。価格高騰ばかりでなく、築年数の浅い物件も多く出回っているという。一方で、価格が上昇しすぎて投資物件としてのうま味が薄れてきているという指摘もある。そこで、札幌市内の中古マンション価格の現状と今後についてレポートした。
コロナ禍でも止まらない価格高騰
札幌市内中古マンションの価格高騰が止まらない。不動産情報サービスの東京カンテイ(本社・東京)によると、2021年12月の中古マンション平均価格(70㎡換算、築年数30.4年)は、2004万円だった。前年同月比と比べると231万円増となり、過去10年で最大の伸び幅となった。市内で相次ぐ駅周辺の大規模再開発に呼応して、新築マンションだけでなく、中古の需要も高まっている。
21年の中古マンション取引は、新型コロナの影響を受けることなく堅調な動きを見せた。特に再開発が進む北区や東区、厚別区で中古価格の上昇が目立つ。再開発エリア内にはタワーマンションのほかに、病院や大型商業施設、学校、駅との連絡通路が整備されるなど、街の発展をきっかけに、住まいを求める人が増えているようだ。
JR苗穂駅周辺の再開発が進む東区は、12月の中古平均価格が2357万円となり、中央区の2339万円を超えて市内10区で最も高い価格となった。1年で523万円も上昇している。
平均築年数は札幌全体の30.4年より大きく下回る22.7年。築年数の浅い物件が多く出回っている。
JR札幌駅近くの北8西1街区再開発が進行中の北区は、前年同月と比べ480万円増の2322万円。厚別区も新さっぽろ駅周辺地区再開発の波及効果により、222万円増の1857万円となった。
このほか、手稲区では1221万円から1510万円と大きく上昇していて、郊外でも中古マンション需要は高まっている。
投資の側面色濃く 22年は横ばいか
近年の札幌市内の中古平均価格を見ると、東日本大震災があった11年は1025万円にとどまっていた。しかし12年以降は安倍政権下の経済効果により投資環境が改善したことや、建設費高騰で新築マンション価格が上がったことに伴い中古も上昇。これに低金利が重なったことで需要は増し、年々価格を伸ばし始めた。
18年6月には07年1月の調査開始以来、最高値となる1609万円を記録。今では2000万円台となり実需だけでなく投資への側面が色濃くなっている。
札幌市内の新築マンション平均価格が4000万円を超えるようになり、簡単に購入できる価格帯ではなくなっている。そこで中古物件が注目されるようになったが、中央区をはじめとする人気のエリアでは割安感はない。
東京カンテイ市場調査部の井出武上席主任研究員は「高くなり過ぎて、買い控えが出てきてもおかしくない」と懸念を示す。この状況で中古物件を購入し、賃貸収入を得ようとしても、札幌市内の家賃がそこまで高くないため、投資メリットは薄いと指摘する。
このため、22年の中古マンション市況については「21年のように価格が急騰するのではなく、横ばい程度に落ち着くのではないか」と予測している。
(第1069号 2022年2月16日発行 1面より)
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