想いを叶える親愛信託 71
- hjsstanaka
- 4月25日
- 読了時間: 4分
第71回「不動産にはなぜ親愛信託が必要なのか?」

不動産を分けずに複数人で相続
財産にはいろいろな種類があり、それぞれに特徴があります。金銭は分けやすく他の財産に変えることもでき、使い勝手がいいですが、金銭自体が何か収益をうむことはありません。預金にして利息を得たり、投資して増やしたり運用して初めて利益を生むことになります。
不動産は、自宅のように収益を生まないものもありますが、何もしなくても価値上がり将来、売却すれば多くの収益が得られるものもあります。また、売却すれば多くの収益が得られるものや賃貸にして収益をたくさん得られるものがある反面、逆に修繕費などの経費がかかる上に買い手がいない、いわゆる負の財産など、様々です。不動産によって価値が変わるので、金銭と違って公平に分けることはなかなか困難です。そのため、どの不動産を誰が相続するか、誰がもらうか、ということでもめがちです。
親愛信託を活用すれば、不動産を所有権で引き継ぐのではなく、管理する人と財産権を持つ人に分けて、共有せずに収益を複数の人でも分けられるようにしておくことができます。共有になると面倒な不動産を共有でなく、複数の人で持てる上、さらに誰に引き継がせるかも決めておけるので、相続でもめることもありません。一方で分け方に不満がある人は裁判で争う場合もあると思いますが、そのようなケースは不動産だからもめるのではなく、そもそもどう分けたとしても裁判に持ち込むケースがほとんどです。
そういった可能性がある場合には、財産に対する対策ではなく別の対策をする必要が出てきます。ただ、当初からそこまでもつれこむ予測ができることは少ないです。ほとんどがいざ相続となってから、当事者それぞれの思惑と違うことからもめてしまうのです。そうなると財産の価値というより、感情が先ばしり、合理的な解決が難しくなるのです。
金銭・不動産どちらがよいか
どうせ相続をするなら、不動産より金銭の方がいいという意見も聞きます。特に若い人に多いようです。一方で、ずっと収益を生み続け、将来価値が上がる可能性がある不動産の方が良いという意見もあります。もちろん物件にもよりますが、その人の考え方次第です。
不動産で相続して欲しいと考える人は受託者に向いています。不動産は面倒だという人は、受益者として収益を得て、管理はしない立場になればよいと思います。受託者になって、不動産を管理する人は受託者報酬をもらえる契約にしておき、不公平にならないようにすることも可能です。
また、残った財産を分けるときに揉める原因として「自分の貢献度が高いから多く財産をもらうべきだ」というと言い出すケースもあります。残った財産を貢献度で分けるのではなく、管理料として受託者報酬をもらうのは当然なので、文句のいいようがありません。受託者報酬は根拠を示して決める必要があります。好き勝手にもらえるわけではないので、正当な対価をもらうことになります。
ある事例では、父親に不動産価値1億円で収益が800万の土地建物がありました。母親が元気で、子は3人兄弟です。長男は公務員、次男は自営業、三男はサラリーマンで、不動産管理は次男が向いています。父親が高齢になってきたので、父親と次男で信託契約を締結します。当初は受益者を父親、二次受益者を母親、三次受益者を兄弟3人にしておきます。次男は受託者報酬として、年間の収益の5%の40万を毎年収益の中からもらうように決めておきます。収益が変われば金額も変わりますし、受託者の働き方や世間の状況を見ながら変更や決定をして、受益者に通知します。
また、父親が受益者の間に認知症になってしまい、その報酬が適切か判断がつかなくなった時に備えて、長男を受益者代理人にしておきます。三男を信託監督人に設定して、兄弟3人で信託財産を守っていくこともできます。
このように親愛信託を活用すると、分けにくい不動産でもみんなが協力して、収益を分割しながら守っていくことが可能になります。
監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)
よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長

略歴
2015年行政書士まつおよう子法務事務所開業。
16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。
著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。
(第1129号 2025年2月16日より 引用)
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