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想いを叶える親愛信託 69

  • 執筆者の写真: oikaway4
    oikaway4
  • 4月23日
  • 読了時間: 4分

第69回「円満相続のための親愛信託」




家族会議ができるとは限らない


 財産が多くても少なくても、もめる親族はもめますし、もめない親族はもめない。その違いは根本的には、両親などの被相続人や財産に対する考え方によります。それぞれの考え方を変えることはできませんが、財産を持っている人ができることはあります。それは、きちんと行く先を決めておいてあげることです。財産の行方を決めるときに家族会議をすることが最善という意見もありますが、必ずしもそうではありません。連絡が取れない、円満な話し合いができないというケースもあります。家族が遠方にいるというように物理的な要因で家族会議ができないこともありますし、そもそも意見が食い違って話にならないという場合もあります。


 理想は、みんなの意見を聞いて、話し合い、結果も共有するという方法で相続を迎えることです。しかし、家族会議ができないから相続対策をしないのは本末転倒です。所有者は自分の財産を自由にすることができます。将来、もめないように所有者がその財産の将来を決めておくとよいでしょう。財産の管理が上手な人を受託者にし、自分が亡くなった後に受益権を承継させる人は、相続人に平等にしてもよいですし、その信託財産に対する貢献度で受益権の割合を決めてもいいと思います。


 また、自分が亡くなったときに継がせる受益権の割合を変えるのではなく、継がせる受益権は相続人で均等にしておき、自分が生きている間は、貢献度が高い人に受託者を委任し、受託者報酬という形で支払うこともできます。その方が相続になったときに残る財産の割合が同じになるので、もめにくいのがメリットです。親愛信託にした理由はなんなのか?ということを相続人がわかるような形にしておき、納得できるようにしておけば、円満相続が実現できます。文句を言ってくる人は、どのように分配しても不満を言って来ることが多いです。それならば、自分が思うように受益権のいく先を決めておき、その後も分け方に不服が出にくいように決めておきます。


亡き後にも遺族がもめない財産分与


 例えば、子供が男の子2人で、兄は親孝行だけど弟は非協力的だとします。しかし、兄には子供がいないけれど弟には子供がいるというケースだと、自分が亡くなった後に兄に4分の3の受益権、弟に4分の1の受益権が行くように親愛信託契約を締結しておきます。そして、兄に引き継がれた受益権は兄死亡後に弟の子に引き継がれるようにしておきます。そうすると、自分が持っていた受益権は一旦兄にいきますが、そのあとは弟の子にいくので、兄を経由しますが、最終的には相続で弟に財産を渡したときと同じ結果になることになります。その将来が約束されていることで、弟も納得しやすくなります。これは自分の代だからできることで、子供同士の話し合いではまとまりません。


 親愛信託を活用した財産承継で、あえて相続人や親族の話し合いの場をもうけずに委託者と受託者で話し合い、契約を締結したケースがいくつかあります。もちろん、話し合いを持てる環境にあったのに話し合いの場を持たなかったわけではなく、離婚などでそばにいる環境になかったケースです。「被相続人の考えたことであれば」と、もめることなく納得してくれました。遺言と違って自分では管理できないけれど財産権は持たせてもらえる等の対策ができるので、事前の家族会議や説明がなくても納得しやすいというメリットがあります。


 無理やり家族会議の機会を作り、自分の意見が通らなければ円満相続にはなりません。話し合いをしてもまとまりそうにない場合には、ある程度の財産権を受益権として承継させるようにしておくことで、生前には家族会議をしないことで円満相続につながる場合もあります。


 このように必ずこれが最善策というものがあるわけではなく、それぞれに合った親愛信託の活用方法があるのです。





監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1126号 2024年12月1・16日合併号より 引用)







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