想いを叶える親愛信託 67
- oikaway4
- 4月18日
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第67回「信託活用での法人の使い方」

法人を活用した信託はメリット大
信託のスキームで、法人を活用することがあります。法人には株式会社や合同会社、一般社団法人などいろいろな法人格があります。信託の活用でよく使われるのは一般社団法人です。
なぜ、一般社団法人を活用するかというと、一般社団法人は誰のものでもない法人なので、株式会社や合同会社のように「株や持分を誰が引き継ぐのか?」という問題がないからです。将来の相続対策で信託を活用するのに株式会社を使ってしまうと、その法人の株を誰が引き継ぐのかという問題がさらに発生してしまいます。そこで、一般社団法人を使うことが多くなります。
株式会社がいいという要望もありますが、受益者にしてしまうと株価が上がり問題解決になっていないので、お勧めしませんし、実際に受益者を株式会社にするスキームを私は使ったことがありません。ただ、受託者に株式会社を使うというスキームを使うのが良いということであれば、受託者は財産を持たないので1円で株式会社を作り、利益が出なければ株価は0円になるので、株価の問題はなく、その株を誰が引き継ぐかという問題のみなので受託者にすることを選択肢に入れてもよいと思います。
財産がたくさんあるのに将来、受益者になる人がいない場合に一般社団法人を指定することはあると思います。その場合に一般社団法人の理事が、同族や代表理事が持っている法人の社員などの場合、特定一般社団法人に該当して、もともと財産を持っていた理事ではない理事が亡くなっても相続税がかかる可能性があります。そのため受益者を法人にする場合には慎重に検討しないといけません。
信託の委託者に法人がなることもできます。ご説明したように受託者にも受益者にもなることができます。所有権の時には考えられない信託行為を行ったから設定できる「信託監督人」「受益者代理人」「受益者変更権者」「受益者指定権者」「残余財産帰属権利者」などに指定することもできます。
法人を活用する最大のメリットとしては、法人は死亡しないということです。そのため解散しない限りはそのまま役割を続けることができるので、法人の役員が亡くなっても他の人が役員に就任すれば引き続きその役割を続けていくことができます。法人を活用することで親族や相続人など考慮する必要なく、法人の構成員を選べます。法人を受託者にするメリットは代表を自由に選べるということです。
名義変更しても本人が事業承継できる
もう一つは、信託財産にすると、これまで所有権を持っていた人が名義変更に抵抗を示す場合があります。その時に所有者だった人を代表もしくは役員とした法人を作ることで、これまでと同じような財産管理ができるし、自分では管理できなくなった時に役員を変更することで、将来の対策にもなるということで納得してもらいやすくなります。
家族や親族みんなで財産を守っていきたいけれど、財産承継に抵抗を示している場合に、ご本人を代表にした法人を受託者にすることで解決する場合が多くあります。
事業承継が進まないのも先代が株を譲ろうとしない、課税が多すぎて譲れないというケースがあります。不動産でもそうです。課税の問題やご本人の意思がかたくなで財産承継が進まないという場合に、代表をご本人にした一般社団法人を受託者にして、不動産などの対策に取り組むことができます。二次受益者や三次受益者になる人がいない場合に一般社団法人を受益者にすることも考えられます。親族などが少なく将来的に親族関係のない人で構成することになれば、特定一般社団に該当せず相続税対策にもなります。
法人を維持していくために受託者報酬を出す必要がありますが、これもご本人の財産が減るので相続税対策になります。大切な財産をどう使うか、信託と法人を活用して、ご本人を中心にご本人の大切な人たちと一緒に話し合いながら進めていくことができます。
監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)
よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長

略歴
2015年行政書士まつおよう子法務事務所開業。
16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。
著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。
(第1123号 2024年10月16日より 引用)
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