想いを叶える親愛信託 59
- oikaway4
- 3月24日
- 読了時間: 4分
更新日:3月25日
第59回「親愛信託で愛人に財産が残せる!?」

公序良俗違反の契約は無効
親愛信託について「活用すると自分の財産を自由に承継させることができます」「法定相続を気にせずに自分の渡したい人を指定しておくことができます」「財産に関してはとても万能な仕組みです」―という説明をします。
「自由に承継させることができるということだったら愛人に財産を残すことができるのではないか!」という質問を受けます。愛人に財産を渡すような契約をすると、そもそも公序良俗違反の契約は無効になりますから、法定相続人ではない人に財産を渡すというのとは別の問題になりますよね。愛人という言い方をしていても実際は愛人ではない場合もあると思います。大切なのは、実態がどうなのかということになります。
実際は信託していないのに、登録免許税を安くするために信託をしたような形にするというのはもちろん脱法信託になります。本当はそうでないのにあたかもそのように見せるというのは認められません。
愛人と一言で言ってもその内容がどうかということになります。不倫相手に財産を残すということはできませんが、お世話になっている人に財産を残すことは、法定相続人に関係なく可能です。
例えば、離婚をしている人が過去のようなことは繰り返したくないので、もう正式に誰かを配偶者にしたくないという考えだけれども、一緒に生活を共にしている人がいて、正式に何かの法的立場があるわけではないから「愛人」と呼んでいるいわゆる内縁配偶者の場合は、実態が愛人でなければその人に財産を残せるように親愛信託を活用することはできます。
過去に離婚をしていて、子供がいれば法定相続人に当たる人はいます。法定相続人以外に財産を残すためには「遺言」を書くか「親愛信託」を活用する必要があります。そうすると過去の当コラムでご説明したように、遺言よりも親愛信託のほうが確実に財産を渡せますし、将来自分の血族に不動産などが戻ってくるような仕組みにしておくこともできます。
将来、受益権が相続人に戻る契約設定も可能
法定相続人でない人に遺贈することはできますが、相続の手続き上で渡すことになりますので、相続人にあからさまに知らせることになります。相続人にとっては「故人の財産だからどうしようと自由だけれども自分たちに分からないようにしてほしかった」というような意見もあります。その点、親愛信託を活用すると相続税の申告があれば申告書上には掲載されますが、あからさまに内容を見なくても済みます。
愛人に財産を残すことは法的にできませんが、配偶者がいてもずっと力を貸してくれた異性やパートナー、もしくは内縁配偶者に財産を残すことはできます。しかも相続ではないので、相続人に遠慮することなく信託契約で財産を渡せるようにしておくことができます。
「遺留分は?」という話になると思いますが、遺留分に関してはまだどうなるか分かりません。ただ、遺言ですと当然に遺留分を請求できますが、信託受益権に対して遺留分が請求できるかどうかはまだ分かりません。
―ということは遺言よりも確実に財産を渡せる確率が高くなるということになります。遺留分が関係しないくらいの財産を受益権で渡すということも考えられます。
さらに大事なのは、相続人でない人に財産を渡してもその人が亡くなった後にまた相続人に受益権が戻るような設定にしておくことが親愛信託を使うと可能だということです。
遺言で所有権として遺贈するとその人のものになってしまい、将来はその人の相続人に財産が渡ってしまいます。金銭ですとその人が使い切ってしまう可能性が高いですが、不動産だと残る確率が高いし、収益性の高い不動産ならあえて売ってはいけないという信託契約にしておけばその人が生きている間の生活を守るために不動産からの収益を渡して、その人が亡くなれば相続人に戻してもらうというようなことができます。親愛信託は財産についてはとても万能で使い勝手のいい仕組みです。
監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)
よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長

略歴
2015年行政書士まつおよう子法務事務所開業。
16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。
著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。
(第1107号 2024年1月1日 より 引用)
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