想いを叶える親愛信託 50
- oikaway4
- 2月28日
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更新日:3月3日
第50回「信託ってなあに?」

自分と遺された人 両方のためになる信託
「信託とは」自分の財産について、自分と遺された人のためになる仕組みです。信託が難しいと言われる原因は「信託」という仕組みについての考え方が普及していないというところです。信託を業務としている方でも「信託とは?」と聞かれて、一言で分かりやすく説明できる人は少ないのではないでしょうか?いろいろな対策ができるので説明が難しくなるというのもあります。
信託はその人の使い方次第で、リスクを軽減し望みを叶えられるものです。自分の財産の対策として「遺言を書きましょう」というのはかなり浸透してきています。ただし、「遺言」というのは自分が亡くなってから効力が発生するもので、自分の生きている間の対策にはなりません。手続きを少なくし、争いごとが起きないようにという、遺された人のための仕組みです。
生命保険の死亡保険金も、死亡保険金そのものは受取人のためのものなので、遺された人のためのものです。終活というものも普及してきていますが、これも自分のためのものなのか、遺された人のためのものなのかというと、どちらかというと遺された人が大変な思いをしないように、遺された人に負担がかからないようにという部分が多いように思います。自分がいなくなった後に「そんな人だったんだ」と思われたくないという思いからではないでしょうか?
でも、この超高齢化社会において本当の対策は「生きているときの自分のための対策」と「亡くなった時に遺された人のための対策」の両方だと思います。そこで、自分の老後のための対策、そして遺された人のためにもなる仕組みとして「信託」がクローズアップされ始めたのではないかと思います。
老後の対策としてできるものは「信託」や「任意後見契約」といった法律的なものだけでなく、デイサービスを事前に決めておいたり、コミュニケーションの場をつくっておくなどいろいろあると思います。そして「信託」はその中の1つです。いろいろな仕組みの中でも「財産」において、信託は一番と言っていいほど優れたものです。
所有権のときの1つの役割が3つに分かれる
信託では自分の現在持っている財産を信頼できる人に託します。信託をスタートさせる時に財産を持っている人のことを信託という法律では「委託者」と言います。そしてその財産を託された人のことを「受託者」と言います。財産には所有権があり、その所有権を持っている所有者という人がいますが、信託をスタートさせるとその考え方ではなくなります。
ここが最も難しいところなのですが、今までは当たり前に所有者がいて、その人が所有権を持っていてという考えではなくなるのです。信託をスタートさせる財産の持ち主が「委託者」で、その財産を託された「受託者」がその財産の名義人となり信託が続いている間は財産を管理・運用します。そしてその信託になっている財産について権利を持っている人が「受益者」となります。
所有権の時には一人が持っていた役割が3つに分かれるのが信託です。3つに分かれるのですが兼任もできます。通常、委託者と受益者は同じ人になります。なぜかというと税金の問題です。所有者が変わると税金がかかりますよね。譲渡すれば譲渡所得税が、贈与すれば贈与税が、死亡で所有者が変われば相続税がかかります。所有権から信託がスタートして役割が3つに分かれても税金の仕組みは同じです。財産が信託財産に変わってから税金がかかる人は受益者です。受益者が変われば、変わった原因の税金がかかります。
そのため、信託がスタートして所有者だった人が受益者でないときは税金がかかることになります。所有者だった人が信託をスタートさせる委託者になるので、税金がかからないように所有者と受益者を一緒にするという風にすれば、委託者と受益者が一緒になるという仕組みです。
今回は信託がどういうものなのかを他の仕組みと比較して説明しました。次回は「家族信託・民事信託」と「親愛信託」の違いと使い方を説明したいと思います。
監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)
よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長

略歴
2015年行政書士まつおよう子法務事務所開業。
16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。
著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。
(第1094号 2023年5月1・16日合併号 より 引用)
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