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想いを叶える親愛信託 48

第48回「親愛信託の活用事例」



親愛信託活用のお勧めはどのようなケースか


 親愛信託は財産に対する様々な悩みを解決してくれます。プラスの財産で特定できるものであれば全て信託財産にすることができます。そして本人確認が厳格に行われるものであればあるほどその効果は高くなります。たとえば、代理の人でも処分行為などが容易にできるものは、それほど信託財産にする必要性がないかもしれません。また、家族などであれば、本人に代わって処分行為などができるものも必要性が少なくなります。全ての人が大小はあっても何らかのプラスの財産を持っています。そのため親愛信託を検討する必要があるのですが、費用と時間をかけて信託行為までしなくても解決することもあります。


 どのような人に親愛信託を活用してほしいかというと、まず本人確認が厳しく行われる財産を持っている方です。不動産などはその代表的な財産です。


 次にその財産の管理や処分行為をお任せしたい人が家族や親族でない場合です。内縁関係の方やおひとり様などがそうです。もちろん他のケースもありますが、今後おひとり様は増えていくといわれています。過去には家族もいたけれど、離婚して子もなく両親も亡くなり、兄妹がいない、もしくは亡くなってしまい、結果的におひとり様になってしまったなど、長生きになればなるほどおひとり様の確率は高くなります。


 認知症対策としての信託の活用は必要ですがそれだけではありません。将来、誰に自分の財産管理や処分を任せて、誰に承継させたいかきちんと決めておくことができるものです。任意後見契約でもできますが、親愛信託に比べると自由度がはるかに低くなります。


 逆に遺言書は生きているときの対策にはなりませんが、誰に承継させたいという望みは叶えられます。その代わり一代先の指定しかできないことと、管理する人と承継させる人を別々に指定するということはできません。


 たとえば、配偶者に先立たれて、子供はなく、兄妹はいるけれど自分と年齢が変わらないので、誰が先に亡くなるか分からない。甥姪の中に可愛がっている甥がいて、将来的にはその甥に財産を管理させて承継させたい。しかし、その甥には配偶者はいるが子がいない。甥に行った財産を甥の配偶者には渡したくないというような場合には親愛信託を活用して、甥の次を指定しておきます。年齢の順に亡くなるわけではないので、万が一甥の方が先に亡くなったときに備えて他の甥や姪を指定しておくこともできます。


信託は状況の変化に応じ契約内容の変更も可能


 別の事例として、子供が3人いて、その中の1人を自分が財産管理をできなくなった時に自分の代わりに管理をしてくれるよう指定しておきます。財産管理をしてくれたその子には多く財産を渡したいというような場合や3人のうち実際に自分に貢献してくれるのがどの子になるのか事前には分からないような場合は、自分が亡くなった時に効力が発生する遺言書では対応できません。


 また、亡くなった後、一人だけに多く財産を渡す遺言書を書くことに抵抗がある場合です。自分の財産管理をしてもらった子に多く財産を残すという内容の遺言書を書いてしまったばかりに争いごとになったり、それが原因で兄妹仲が疎遠になったりしてしまっては意味がありません。


 親愛信託を活用して、状況の変化に応じて契約の内容を変更したり、受託者報酬という形で管理してくれた子に生前に正当な額の財産を渡せるようにしたりすることができます。契約の変更もご本人の判断能力が低下した後も受益者代理人を設定するなどして変更できるようにしておきます。


 判断能力もある日突然ゼロになる場合はまれです。多くの場合は契約行為ができる状況でなくなったとしても自分の意思表示ができる期間があります。その時に自分の意思を伝えて契約の変更ができるようにしておきます。もちろん信頼関係が大切です。金融機関の商品のように決まった形に当てはめるのではなく、ご本人の希望を叶えるためにオーダーメードできるのが親愛信託なのです。



監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1091号 2023年3月16日 より 引用)







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