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想いを叶える親愛信託 46

第46回「受託者を変えられることのメリット」



所有権とは違った承継で将来の変化に柔軟に対応


 不動産を承継していく際に将来のことを考える必要がありますが、これが非常に難しいのではないかと思います。子供がまだ若く、将来誰と結婚するのかしないのか、子供が何人できるのかできないのか、現時点では不確定な場合に所有権で不動産を渡してしまうと、その不動産が自分の計画通りに活用されなくても、変更しにくいものになります。


 親愛信託を使った場合には将来の変化に柔軟に対応することができます。ただし、財産権である受益権を動かす場合には贈与税や相続税などの課税も考慮しながら考えていく必要があります。受益権が動くと課税が生じるため相続まで待って承継する方が多いです。そして、均等に渡したいという希望が多く、受益者が複数になるスキームがほとんどです。


 もちろん贈与や譲渡などで生前に承継する場合もありますが、相続で動かした方が課税の負担が少ないというのと、受益権を渡してしまうと受益権者を他の人に変更するときに再度課税が生じるので、当初所有権を持っていた人が亡くなるまで待って、じっくり承継させるという考え方です。


 では、名義を持って管理する受託者はというと、所有権の時と違って、受託者を変更するときには課税は生じません。そのため委託者である本人が元気なうちに早めに収益不動産を信託財産にして、状況に応じて受託者を変更できるようにしておきます。


 このように所有権とは違った財産の承継の形を取ることができて、さらに名義を持つ受託者の変更は容易にできるという親愛信託の特性を使って、将来の変化に対応できる財産承継を行ってくことができるのです。


財産管理の仕方の手本を見せることも可能な信託


 たとえば、不動産を所有している方がいるとします。その方が委託者兼当初受益者となり、収益不動産と金銭を信託財産として、お子様と信託契約を締結します。そして、お子様が受託者としての義務を果たせなくなった場合の新しい受託者をお孫様に設定しておきます。


 当初の受益者が持っている財産権は、受益者が亡くなった時に半分を配偶者様、もう半分はお子様に承継されるようにしておき、配偶者様が亡くなった場合にその受益権はお子様に承継されてすべての受益権をお子様が持つことになります。

 この時点で、受益者と受託者が全く同じ人になりますので、その時点で受託者をお孫様に交代します。何もなければこれでよいのですが、人生いろいろあります。自分の子供が適切に管理できなかった場合に一時的に手本を見せるために委託者の方が受託者になることも可能です。


 その場合、1年以内にまた受託者を交代するか受益権を一部配偶者様に贈与するなどの工夫が必要になりますが、自分がまた管理することも可能です。自分がいなくなってお孫様に管理を任せるのではなく、自分が元気な間にお子様からお孫様に受託者を交代して、どのような管理をするのかお手本を見せることもできます。そして、一定時期が来るとまたお子様に戻せばよいのです。このように親愛信託を使うと、受託者の変更が容易にできるため、自分の思った通りの財産の管理、そして承継ができるのです。



監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1087号 2023年1月1日第2部 より 引用)







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