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想いを叶える親愛信託 44

第44回「跡を継ぐ人がいない場合の信託の活用事例」



跡を継ぐ人がいない場合の信託の活用事例


 後継者がいない場合の対策は、財産を持っている本人の周囲の環境がどのようなものかによって変わります。「子供がいないなど、そもそも相続人に当たる人もいない」のか、「能力的に跡を継ぐにふさわしい人がいない」のかといった周りの環境や状況によって対策は違ってきます。ただ、どのようなケースにおいても親愛信託は有効です。


 まず、子供がいない人のケースです。子供がいない場合、誰に財産をどう継がせるのか悩むと思います。金銭の場合、親族で均等に分けることも可能です。しかし、不動産の場合は複数あったとしても全く同じ価値の不動産ではないので、均等に分けることは難しいです。


 たとえば収益不動産を1棟だけ、もしくは1室だけ持っているという場合ですと、財産を継がせる者を誰か1人に決める必要が出てきます。子供同士でももめるのですから、血のつながりがあるとはいえ甥や姪など育った環境も違う他人同士の共有にするのはリスクが多過ぎます。


 1人に決める方が安全ですが、それを誰にするか迷います。そのような場合にあえて、複数の親族にひき継がせたいのであれば、自分が元気なうちに1人を決めて受託者にします。そして、自分の思い通りの管理をしてくれるかどうか自分で確認して、任せられると思えば受託者とし、その人自身も高齢になり認知症になるなど自分で管理できなくなるまで受託者としての任務を果たしてもらうようにします。


 もちろん、正当な受託者としての業務に対する報酬をもらうことも可能なので、その人だけがただ働きになるという事はありません。家族信託の場合、多くの場合が受託者は無報酬です。その場合は受託者が二次受益者という事が多く、将来的には受託者が受益権を持つようになるので、ただ働きでもそれほど気にならないのですが、当初受益者の次の受益者が複数いる場合には、受託者が1人で受益権を引き継ぐわけではないので、そこに対する対策も必要になってきます。


 このように、受託者を決めておいて、自分がいなくなったあとの受益権は親族みんなで均等に持つということもできます。自分が元気なうちに受託者にいろいろな人に就任してもらい、一番適した人に受託者を続けてもらうということも可能です。所有権では考えられないことですが、いろいろな人で試してみて、一番適している人に名義人として継続してもらうというようなことが親愛信託だとできます。別の言い方をすると、跡を継ぐ適任者を探すことができるのです。そのためには自分が元気なうちに何人か試してみる必要が出てくるので、少しでも早く親愛信託を実行することが肝心です。


財産を「こうする」とあらかじめ示しておく


 次はこの人にしたいという事が決まっているケースです。それが親族なのかそうでないのか。後継者は親族の中から選ばないといけないわけではありません。兄妹相続の場合は遺留分減殺請求権が発生しないため、遺留分を気にすることなく自由に財産を承継することが可能です。


 ただし、法的には問題がなくてもやはり快く思わない人がいるかもしれません。みなさんも日常感じることがあると思いますが、法的に関係ない人は責任がないので、無責任によけいな口出しをしてきます。せっかく財産を残したのにもめると財産を残された方も嫌になってきます。そうならないようにするには、きちんと周囲の人も認めるように、自分が元気なうちから「将来はこうする」という事を周りに示しておくことが必要で、親愛信託ならそれが可能です。


 登記事項証明書にも記載されるので、誰が見ても一目瞭然です。自分が元気な時なら「なぜそうしたのか」を説明することもできます。遺言では、後継者を指定して、周囲が誤解した解釈をしても説明することができません。子供がいない、跡を継ぐ人がいない場合こそ親愛信託で適任者を試してみて、将来に備えることが大切なのです。



監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1085号 2022年11月16日号 より 引用)







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