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想いを叶える親愛信託 43

第43回「いつ信託をスタートさせる?」



手遅れにならぬよう早めの検討・実行を


 「もう少し年を取ったら終活もしないといけないし、信託も検討しないといけないと思っている」という風に信託は高齢にならないと検討しなくていいものと思っている人がいます。まだまだ若いから信託を使う必要がないと誤解されています。


 遺言で親愛信託をスタートさせるという方法もあるように、実行する時とスタートさせる時期がずいぶん離れているケースもあります。「いつ検討して」「それをいつ実行して」「親愛信託のスタートはいつにする」という事を考えないといけません。そのためタイトルにある「信託をいつスタートさせる?」という答えはその人によって様々です。


 ただ、手遅れにならないように早めの検討、早めの実行が優れていることは間違いありません。他の仕組みと違ってスタートさせてからも内容の変更ができるので、早くスタートさせても問題がないのです。わざわざ、頭も身体も動きが鈍くなってしまう高齢になる時を待たずに、いつからでも始められます。早く始めたために信託の期間が長くなっても、費用が高くなることもありません。むしろ、期間が長くなるので、贈与や譲渡を含めた信託財産の処分の効果が上がります。


 では、早く親愛信託をスタートさせたときのデメリットは何でしょう。財産に対して所有権のまま持っているときと同じような状態にするには、名義も権利も自分で持つようにしないといけないので、自己信託でスタートさせることになります。自己信託は受託者と受益者が全く同じ状況のまま1年経ってしまうと信託は終了するという信託法の決まりがあります。そのため、1年以内に受託者を変更するか受益権の一部を自分以外の人に持ってもらう必要があります。これが一番のデメリットではないかと思います。しかし、デメリットに対する対応策があります。1年以内に契約を変更するか受益者をもう一人増やすという方法です。


 受託者を変更すると管理や処分権限は新受託者に移るため、自分では管理などをできなくなるので、受託者を変更するのは自分が信頼できる人が見つかった時や後継者が成長した時にします。受託者になれる人が見つかってもすぐに交代する必要はなく、信託契約を変更し、新受託者として指定しておいて、それまでは自分が受託者を続ければ良いのです。

最初から次の受託者が決まっているが、まだ成長段階という場合には「○○歳になったら、受託者を交代する」とか「代表取締役に就任したら受託者を交代する」というように条件付きで受託者を指定しておくこともできます。


デメリットをメリットに変える


 もう一つの方法は受益者を増やすという方法です。この方が、早い時期に信託をスタートさせる場合の方法としては現実的だと思います。後継者の成長に応じて、受益権を贈与していくという方法も取れます。受益権は割合で贈与することになりますので、信託財産の評価とその贈与した割合によって、みなし贈与となり贈与税の対象になります。贈与で相続税対策をする場合に「判断能力がいつまで確実か分からない」「判断能力がなかったのではないか」と否認や否定されるリスクを負いながら贈与していくのであれば、受益権を譲る方ももらう方も判断能力がしっかりしている若いうちの方が確実です。所有権を贈与するのではなく、受益権を贈与するので、勝手に第三者に売却したり、質にいれたり、抵当権を設定したりすることはできません。


 受益者を複数にしないと親愛信託が終了してしまうというデメリットの対策として受益者を増やすことが将来の相続対策や承継対策になるというメリットに変わるのです。もちろん贈与ではなく譲渡してもかまいません。まだ将来が長いので、対価として金銭を得られる譲渡という方法を取った方がいい場合もあります。その場合には譲渡所得税もしくは法人税の対象になります。このように親愛信託を活用するとデメリットをメリットに変えて、自分の想いを叶えられるのです。



監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1083号 2022年10月16日号 より 引用)







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