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想いを叶える親愛信託 41

第41回「早期隠居も死ぬまで現役もどちらも可能」



好きなタイミングで事業承継する手段


 不動産事業に限らず、経営者がいつ後継者に経営権を譲るかというのはみなさん迷うところだと思います。相続で経営権を譲ると、いつのタイミングになるのか誰もわからないことになってしまいます。自分の選んだタイミングで渡すことが理想です。


 親愛信託を活用すると早い段階で後継者に経営権を渡して、自分はまた新たに別のことに挑戦したり、事業を始めることも可能です。もしも、ずっと自分で経営を行っていきたいという事であれば、事前に次の経営者を決めておいて、ぎりぎりまで経営していくことも可能です。「早期隠居」も「死ぬまで現役」も自分のライフスタイルに合わせて、設定することが可能になります。


 もちろん後継者は決めておかなくてはいけません。後継者育成は10年かかると言われています。自分が走り続けるだけでなく後継者育成も必要です。不動産も株式も所有権のままですと、好きなタイミングで事業承継を実行するという事は難しいと思います。


 不動産自体や不動産管理会社の株式を後継者に譲りたい場合は、不動産や株式を信託財産にして、後継者と信託契約を締結します。もちろん、所有権のまま後継者に譲ってもかまいませんが、譲った時点で自分のものではなくなってしまいます。好きなタイミングで渡すということはできません。


 しばらく自分で経営したいという場合や死ぬまで現役を貫きたい場合は、自己信託で不動産や株式を信託財産にします。そして、後継者を予備受託者にしておき、自分の好きなタイミングで受託者を辞任するのです。その時点で、新しい受託者に後継者が就任して、信託財産になっている不動産の名義は後継者に変わり、今後その不動産に関しての手続きはすべて受託者である後継者が行うことになります。


 信託財産にしてから、受託者を辞任するまでの期間が1年以上になる場合は、受益権の一部を後継者もしくは、親族などに渡します。受益権を渡す方法としては、受益権の譲渡か贈与になります。受益者の希望によって、または後継者もしくは親族の経済状況や受益権の価値や価格によって、総合的にどの方法が良いのかを決める必要があると思います。


自分の財産に関し自由に決めておける


 受益権の譲渡や贈与は受託者が行うのではなく、受益権を持っている受益者と受益権を取得する個人(場合によっては法人)の譲渡契約もしくは贈与契約になります。受益権を動かすことができるのは受託者でなく受益者になります。


 受託者が動かすことができるのは名義を持っている信託財産についてなので、受益権を動かすことはできません。受益権を当事者以外で動かすことができるのは「受益者変更権者」になります。もちろん、受益権が動くと課税が生じます。贈与で動かせば「贈与税」の対象になり、譲渡で動かせば「譲渡税」の対象になります。


 ちなみに受益者変更権を使って受益権を動かした場合は、贈与契約をしたわけではありませんが、「みなし贈与」となり、「贈与税」の対象となります。受益権を動かすと税金の対象になるので、その点も考慮した上で動かす必要があります。


 受益権はすべて1度に動かす必要はなく、割合で動かすことができます。割合で財産権を動かした場合でも、受託者がいるので、所有権のまま共有状態になってしまって、持分を持っている人の同意や印鑑が必要になるというような心配はいりません。


 経営権を持っている受託者を交代する際には、財産権を持っている人は受益者なので、税金の心配はせずに好きなタイミングで交代できます。後継者が決まらない場合に候補者の何人かを試してみることも可能です。受託者になった人の意思ではなく、受益者の意思で交代させることも、受託者と受益者の話し合いで決めるようにすることも親愛信託を使うと可能です。「こうしなければいけない」という概念ではなく、自分の財産に対して自由に決めておくことができるのが親愛信託なのです。



監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1079号 2022年8月1・16日号 より 引用)







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