top of page

想いを叶える親愛信託 39

第39回「信託不動産を売却したらどうなる?」



超高齢化社会で親愛信託の活用は必須


 不動産の所有者が高齢というケースが多くなってきています。これは寿命が長くなったことによる影響があると思います。長生きになるということは亡くなった時の年齢が高いという事になり、不動産などの財産を承継する側の年齢も高くなるということです。つまり、寿命が75歳であればその相続人は50歳から60歳くらいだと思います。寿命が95歳になるとその相続人は70歳から80歳になり、相続した時から認知症対策が必要になってくるのです。


 このような超高齢化社会には親愛信託が必須になると思います。早い段階で、後継者を受託者にして信託契約を結び、管理権限を渡し、その後も高齢になる前に管理は若い世代に任せるということを続けていきます。特殊詐欺(オレオレ詐欺)の対象になるのは高齢者がほとんどです。優しい心につけこんだ許せない行為ですが、そもそも信託財産にして、高齢者の判断で財産を持つことなく、判断は受託者に任せるようにしておけばこのような被害も防ぐことができると思います。


 所有権のまま不動産を持つのではなく、信託財産にして受益権として不動産を持つことでのメリットはたくさんあります。不動産業者としても、超高齢者と取引するよりも若い世代と取引する方がスムーズに進むのではないかと思います。


信託契約に従って受託者が手続きを行う


 では、具体的に不動産を信託財産として、その不動産を売却したらどうなるのかをご説明します。不動産の所有者が信頼できる人である受託者と契約をします。その不動産をどう管理して、どう承継していくのかというのを契約で決めておきます。不動産に抵当権を設定する可能性があればそのことも契約の中で決めておきます。


 抵当権を設定する手続きをするのは、その不動産の名義人になっている受託者になります。受託者はその不動産の持ち主ではありませんので、信託契約に従って手続きをする人です。賃貸契約をするのも売買契約をするのも受託者です。


 信託不動産を賃貸すると家賃が入ってきます。家賃が入ってくると信託財産である不動産の果実である家賃も信託財産になります。そのため家賃として入ってきた金銭を管理するのも受託者です。そして、受益者は受益債権を実行して給付を受け、その金銭を使うことができます。


 売却した時も同じです。信託不動産を売却すると信託財産が不動産から金銭に変わります。これまで、不動産を管理していた受託者は金銭を管理することになります。

受託者がその金銭を使って、また新しい不動産を取得することができるように当初の委託者との信託契約で決めておけば、その金銭を使って、受託者名義で新しい不動産を取得することも新たに建設することもできます。


信託財産の不動産は形が変化しても同じ扱い


 途中で受託者を交代したり、受益権が次の受益者に移ることもあります。一旦、信託財産になると信託契約が終了しない限り、ずっと続いていきます。30年ルールと呼ばれている信託法91条で定められている「信託がされた時から30年を経過した時以後に現に存する受益者が当該定めにより受益権を取得した場合であって当該受益者が死亡するまで又は当該受益権が消滅するまでの間、その効力を有する。」というものがありますが、これは次の受益者を指定することに対する規定で、信託の終了事由ではありません。もちろん様々な解釈があり、まだ定まっていないところが多いのが信託法でもあるので、今後きちんと定まっていくことになると思います。

 

 少し話がそれてしまいましたが、信託財産になっている不動産は形が変わっても、受託者が管理をして、受益者がその信託財産に対する財産権を持っているという事には変わりなく、信託が終了していないのに、どこかで突然、信託財産から所有権に戻るという事はないという事です。



監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1076号 2022年6月16日号 より 引用)







閲覧数:2回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


連絡先:

TEL: 011-211-5320

〒060-0042

札幌市中央区大通西6丁目6-1

北海道医師会館 2階

© 2021  HJS 北海道住宅産業新聞社

​お問い合わせ:

メッセージが送信されました。

bottom of page