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想いを叶える親愛信託 37

第37回「不動産を信託した場合の終了のタイミング」



不動産売却前に死亡で 信託終了の契約だと…


 前回のコラムで、認知症対策のために不動産を信託した場合に、「金銭にしてから信託を終了することが大切です」ということをご紹介しましたが、この内容について、詳しくご説明したいと思います。


 認知症対策のために不動産を信託する時の対象として、自宅、収益物件もしくは先祖から引き継いだ不動産などがあると思います。注意してほしいのは「自宅」の場合です。将来、自宅を売却して、施設費用に使うのが目的で家族信託するというケースが多いと思いますが、その場合には、自宅を金銭にして、ご本人の施設費用などとして使い、金銭を使い切って信託が終了となるのであれば問題はありません。信託財産がなくなると信託は終了するので、信託財産である不動産が金銭に変わり、金銭を使い切ってしまうと信託は終了します。


 もし、金銭を使い切る前にご本人がお亡くなりになったとしても、不動産を売却して金銭になっていたのであれば、その金銭はあらかじめ決めていた帰属権利者に引き継がれることになり信託は終了します。子供が複数いる場合に複数の子供を帰属権利者としておいても、金銭なので割合どおりに分けることができます。


 では、もし…売却前にご本人がお亡くなりになり、本人の死亡で信託が終了するという契約になっていた場合はどうなるでしょう。ご本人の認知症対策にはなったかもしれませんが、結果的に売却できなければ目的のすべてを果たせたとはいえず、不動産のまま信託を終了することになります。


 そうなると、帰属権利者になっている人がすでに高齢の場合など、所有者になった人の認知症対策が再度必要になることがあります。登録免許税で考えると信託財産にして、名義を変えた時に固定資産台帳の評価額の1000分の4がかかり、終了した時にまた1000分の4がかかります。信託を活用しないでそのまま相続になったら1回で済む登録免許税が2回かかることになります。契約書の内容によっては終了時に1000分の20かかってしまうこともあります。信託を終了させずに売却した後に終了させれば、当たり前ですが、終了時に登録免許税はかかりません。


 売却時に名義を変えるので登録免許税はかかりますが、通常、買主が負担してくれるので負担はありません。登録免許税の問題もありますが、不動産のまま帰属権利者が複数になっていると信託が終了した時点で共有になるということです。金銭になっていればそれぞれで分けられるものが、不動産のままだと分けられないという問題が出てきて、共有解消のため、再度、信託契約をしないといけないということになりかねないのです。


「死亡で終了」にせず「合意で終了」にする


 もちろん最初から分かっていればこのようなことはしないと思いますが、契約の終了を「死亡で終了する」というようにしている契約は、売却前にご本人が亡くなってしまうリスクがゼロではありません。不動産を売却して、金銭をご本人のために使い、ご本人が亡くなったら子供たちで均等に分けるという予定で信託契約書を作っている場合には、帰属権利者を複数にしてしまっているケースもあります。計画通り進めば問題はありませんが、人の死亡も不動産の売却も予定通りに運ぶとは限らないのです。


 収益不動産や先祖から引き継いだ不動産などは死亡終了ではなく、受益者連続になっているケースがほとんどだと思いますので、今回ご説明しているリスクは少ないと思いますが、認知症対策で自宅を信託財産にして、死亡終了にするという場合は要注意です。死亡終了の場合の帰属権利者は委託者との関係なども含めて慎重に決めておく必要があります。


 その対策の一つとしては、死亡で終了にせずに合意で終了にするということです。ご本人が亡くなった後に終わらせてもよい状況であれば終了させ、そうでなければ終わらせてもよい状況になってから終了させるのです。人の死はコントロールできないので注意が必要ということです。


監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1073号 2022年4月16日号 より 引用)







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