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想いを叶える親愛信託 34

第34回「不動産の後継者への渡し方」


どの方法をとっても何らかの対策は必要


 不動産オーナーの場合の後継者への不動産の渡し方は主に4つあります。オーナーの方針、相続人の構成や課税の状況などによって、その人に最適な方法を選んで対策をしていきます。


 1つ目は不動産そのものを後継者に渡す方法です。一番多いのは、不動産を相続で渡す方法だと思いますが、贈与や譲渡を選択する場合もあると思います。収益性の高い物件は相続まで待つことなく贈与する方が、相続税対策になる場合もあります。


 自分の希望通りに相続で渡すためには遺言を書いておく必要があります。遺留分の問題がある場合には、その分の金銭も用意しておく必要があります。何もしなければ、「相続人に法定相続割合で引き継がれる」もしくは「相続人で遺産分割協議をし、話し合いで誰がどれだけ引き継ぐか決める」ことになります。


 争いが起きる確率が一番高いのはこのときです。「何もしない」という選択は、争いの必要もなく課税の問題もなく、すべての条件がそろった場合になりますので、そうではない場合は必ず何らかの対策はしておいた方が安全です。


 2つ目は後継者を株主とした株式会社を設立し、その株式会社に不動産を譲渡して承継する方法です。株式会社に不動産を譲渡する際に不動産取得税と登録免許税がかかります。そして、後継者の所有する株式を誰が引き継ぐのかという対策をする必要が出てきます。そのため、根本的な承継対策にはならない場合が多いです。


一般社団法人を設立し信託財産の受益権で承継


 3つ目は、自己信託か後継者が新しく設立した一般社団法人などを受託者とし、不動産を信託財産にして、受益権にして承継する方法です。この方法が信託を活用する場合に最も使われる方法だと思います。


 信託を開始した時点では、所有権の移転がないため、取得税や贈与税、譲渡所得税などはかかりません。信託財産にする登記を行うため、登録免許税がかかりますが、所有権のまま移転する場合の5分の1になります。


 信託が終了し、所有権に戻るまでは、受益権が動いた時に動いた原因の課税がされます。受益権の贈与であれば贈与税がかかり、受益者の死亡で受益権が次に承継されればみなし相続財産として相続税がかかります。受益権の移動の登録免許税は1筆につき1000円になります。


 受託者の変更時には登録免許税はかかりませんので、管理する人が適切ではない場合や他に適切な人がいる場合の変更の自由度が高まります。受益者を指定して、親族で引き継いでいくこともできますし、受益権を法人に譲渡や贈与することもできます。不動産そのものを動かすのではなく、受益権にして動かすという方法です。


 4つ目は、株式会社を設立して、法人に不動産を譲渡して、その株式会社の株を信託するという方法です。不動産を信託するのではなく、設立した時の株を信託財産にするのです。すでに、法人が不動産を所有している場合も、所有している法人が株式会社の場合はその株を信託財産にしておくことをお勧めします。その法人の株を「誰に引き継いでもらいたいのか」「誰に管理してもらうのか」しっかり決めておくべきです。


 さらに高度なスキームとしては、受託者を法人にするだけではなく、受益権を法人に所有させるという方法もあります。その際には、受益権を所有させる法人は株式会社ではなく一般社団法人にすることが多いです。株式会社にしてしまうと受託者になる法人と違って、財産のある法人になるのでその株式会社の株を誰が持つのかという問題が出てきてしまい、その株の対策が必要になり、根本的な解決になってないことになります。


 受益権を持つ法人を一般社団法人にするときには、親族で理事を構成するケースが多く、特定一般社団法人に該当することが多いのではないかと思います。その対策も必要になりますが、個人で承継するケース以上の相続税になることはありませんので、そのことを踏まえた上で対策をすればよいと思います。


監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1067号 2022年1月1・16日合併号 より 引用)




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