第25回「資産を承継するベストタイミング」
何を一番に考えるかで変わる 資産承継の仕方
自分の財産をどのタイミングで次に渡すのが一番なのでしょう? 答えは一つではないと思います。理由は「財産の種類」「何を一番に考えるのか」によって変わってくるからです。自分が持っている財産が収益不動産の場合、その財産をずっと持っていると家賃収入もあるので、財産はどんどん増えていきます。利回りのいい物件だと、なおさらです。財産を増やしたいと思っている人にはうれしいことです。手放したくないでしょう。
ただ将来の相続のことを考えると財産が多ければ多いほどたくさん相続税がかかる。これはその人の相続財産の価値が高いということです。
相続税を少なくするには財産の価値を少なくする…もしくは借金をたくさんするということですよね。誰もが考えるジレンマだと思いますが、本質を間違えると自分の考えとは違う思わぬ方向に向いてしまいます。自分にとって一番何が大切なのかを考えることです。老後にお金がなくなるのが怖いからといってずっとお金を貯めて、使わないまま天国に行ってしまう人もいます。
“おひとり様”の相続対策は財産を使うこともその一つの方法だと思います。ずっと金銭のまま持っておくのではなく、金銭を不動産に変えて、収益や自分の収入を使いながら楽しく生きて、老後は不動産収入と年金で暮らしていくという方法もあるかもしれません。
子供や財産を遺したい人がいるのであれば、使うのではなく遺す方法を考えないといけません。親愛信託の優れているところは、不動産そのものや自分の会社の株そのものを渡すのと違って、管理する権限と財産権を違うタイミングで渡せるということです。
いつまでも自社株を先代さんが手放さないというのもよく聞く話です。そういう社長さんはきっと経営も自分でやっていきたいという想いが強いと思うので、管理する権限も自分が持つ自己信託でスタートさせます。本人が大丈夫と思っていても周りからすると「そろそろ後継者に譲った方が…」という状況で、ぎりぎりまで先代さんが頑張って予想外のタイミングで後継者に譲ることになると経営の対策も税金の対策もできません。
「親愛信託」は資産承継を自分が思った通りにできる
そこで、まず名義も権利も先代さんが持つ自己信託をスタートさせておいて、いつ先代さんの判断能力がなくなってもいいように次にその株や不動産の管理をする受託者を決めておき、受託者が変わる状況も決めておきます。そうすると判断能力がなくなってからでは、信託契約をスタートさせたり、財産を動かすことができなくても、受託者を交代することはできます。
あらかじめ、次の受託者になる人も決めてあるので、対策もしておくことができます。そして、財産権の部分も「全部自分が持っていないと気が済まない」というのであれば相続でもめないように、信託できちんと行く先を決めておきます。
自分が指揮を取りたい、後継者には任せていられないというだけなのであれば、受託者になって、先代さんが経営をしながら、受益権は相続税対策をしながら子供や後継者に少しずつ動かしていくということもできます。
もともと不動産や株を持っていた先代さんがどこにこだわるかによって、スキームは変わってきます。自分がどのくらいの財差を持っているかも親や先代が明かさない、どうしたいのかもわからないまま、財産が相続になってしまって大変という話を聞きます。
自分が財産を抱え込んだままにするのではなく、自分で財産を持ったまま将来の対策が取れ、しかも自分の好きなタイミングで管理権限も財産権も別々に動かせて、次やその先の管理者や財産権者も指定もできるという夢のような仕組みが親愛信託です。
実際の使い方が分からなかったり、自分の将来がどうなって、自分がいなくなった後がどうなるのかが想像しにくいので、なかなかピンとこないところはありますが、考えれば考えるほど自分の思い通りにできる素晴らしい仕組みなので、もっとみなさんに活用してほしいと思います。
監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)
よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト代表
略歴
2015年行政書士まつおよう子法務事務所開業。
16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。
著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。
(第1053号 2021年4月16日発行 より 引用)
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