想いを叶える親愛信託 24

第24回「遺留分対策で不動産を信託財産にして受益権を譲渡」




法定相続だと不便な財産は事前に信託財産にしておく


 自分の財産を遺す時、もめ事にならないようにする必要があります。せっかく頑張って築いた財産を遺してもめ事になっては意味がありません。もめないように全部使うという人もいますが、不動産を所有しているとそういうわけにもいきませんし、いつ亡くなるかわからないのにそんなに都合よく全部は使えません。


 それと相続権がある人全員に均等に遺したいわけではない人も多いと思います。自分に尽くしてくれた人にはたくさん遺して、生前にたくさんお金を使った相続人、自分に迷惑をかけた相続人には遺したくないと思うのが当然です。夫婦関係が破綻しているにもかかわらず対外的なものや財産の部分で折り合いがつかずに離婚していない配偶者や散々お金を使ってきた配偶者や子供、一切何も面倒を見ない親不孝な子供など、自分が亡くなった後に相続権はあっても遺産は渡したくないという場合があると思います。


 一方、とても親孝行をしてくれた子にはたくさん遺したいと思うはずです。そのような場合に所有権のままだと相続財産になるので、民法に従うことになります。民法が悪いわけでは決してありませんが、明治時代に作られその後改正はされているものの、120年も前の法律なので現代に合ってない部分があるのは事実です。


 そこで、法定相続だと不便な財産は、事前に信託財産にしておいて自分の思った通りの承継ができるようにしておきます。管理する人と財産権を持つ人を分けることができるので、いろいろな対策を取ることができます。


価値が大きい不動産の場合 信託受益権にして譲渡する


 その1つの例として、不動産の場合、1つの財産の価値が大きいため1度に子に渡してしまうと資金的にも税金的にも負担が大きくなりますので、受益権にして少しずつ渡すという方法を取ることができます。


 もしも将来、遺留分の問題が出てくる可能性がある場合、受益権を贈与すると生前贈与分を遺産とみなす特別受益持ち戻しの対策をする必要があります。これを贈与ではなく譲渡すれば持ち戻しの心配はなくなります。お父さんが収益不動産を持っているケースでは、その収益不動産を信託財産として、自分が渡したい子に受益権を譲渡していくのです。そうするとその不動産の受益権は売買で渡したい子に譲っているので、当たり前ですが持ち戻しの対象にはなりません。


 不動産そのものを適正価格で譲渡するには譲渡所得税の問題やその分の資金を子が用意する必要があり、ハードルが高くなります。それを信託受益権にして何年かに分けて譲渡していくと子に無理のない資金準備で譲渡が可能になります。お父さんが譲渡の対価として金銭を得ることになるので、遺留分対策を完全にするにはその金銭は生命保険などを使って、自分が譲渡したい人に渡すようにしておきます。


 生命保険は受取人固有の財産になりますので、遺留分の請求はできなくなります。もちろん生命保険にしても持ち戻しの可能性は残りますので、早めの対策をする方が有利になります。

 

あとは、不動産の評価によって、不動産そのものを譲渡するより、信託受益権にして譲渡したほうが良いケースもあります。ここは不動産の専門家の腕の見せ所になると思います。信託受益権にすると譲渡するタイミングをこちらが決めることができるので、相続よりも有利にできるケースが出てきます。管理するのは自分のままでもよいので、どのタイミングでも受益権を譲渡することができます。


 固定資産評価額は1000万円、現在の売却相場が3000万円だとします。もちろん評価額と流通価格に差がない場合もあると思いますが、この差が大きいほど受益権を売買にする効果は大きいと思います。受益権の譲渡価格をいくらにするのかは税理士さんと相談する必要があると思いますが、実際に売った時よりも現在の譲渡価格が低ければ、お父さんも子も負担が少なく譲渡が可能になります。しかも遺留分の心配がありません。


 それを自分のタイミングで、自分の思った割合で譲渡していけるのが信託財産にするメリットになります。


監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト代表


略歴


2015年行政書士まつおよう子法律事務所開業。

16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1051号 2021年3月16日発行 より 引用)



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