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想いを叶える親愛信託 22

更新日:2023年2月16日

第22回「いつから始めればいい?相続対策」


早くに検討を始めておくとそれだけ選択肢が増える


 「信託は何歳くらいになったら検討したらいいですか?」「相続対策はもう少し年をとってからでいいですか?」というような質問を受けますが、信託の検討も相続対策ももちろん相続“税”対策も1日でも早い方がいいです。早いに越したことはありません。遅いことはあっても早すぎるということはありません。早ければ選択肢が増えます。

 遅いと自分の希望に沿ったものではなく、「これしかありません」となる可能性が高いです。


 その対策が何のために必要かにもよりますが、たとえば将来、揉めないようにするものであれば、どんなものがあるかご紹介します。揉めないようにするためには、まず相続人が事実を知ることです。相続人だけでなくご本人も自分の財産をきちんと把握する必要があります。もしわかっていなければ、きちんと財産を洗い出すことが重要です。


 お客様だけでなく、不動産業者の方ご本人も財産をお持ちの方がたくさんいらっしゃると思いますが、お正月休みの間に自分にどのような財産がいくらあるのかを整理しておくと、どんな状況にも対応できるようになります。

 今年は普段離れて暮らしている家族が集まりにくい状況ではありますが、財産をどうしたいのか、お正月で顔を合わせた際に家族にきちんと伝えることが大切です。「子には自分の財産のことは言いたくない」「親がいくら財産を持っているか聞きにくい」というような状況、これが揉めるもとです。


当事者全員で話し合い 信託契約書に明記する


 先日、「同居の母と現在の居住マンションが共有名義なので、生前贈与ですべて自分の名義に変えたい」というご相談がありました。登録免許税のことなどを考えると相続まで待って変えた方がいいと思ったのですが、「私は3人兄妹で、母の相続の時に揉めないように今のうちに名義を変えておきたい」とのことでした。

 マンションの持分がお母様66分の50、ご本人66分の16という共有になっていて、どうしてそのような共有持分になっているのかと尋ねると「父の相続の時に他の兄妹と揉めないように父の持分は母にしました」ということでした。


 お父様の相続の時に揉めそうだからお母様の名義にしたのに、今、生前贈与でご自身の物にすると自ら揉め事を作っているようなものではないかと思いましたが、当の本人はそんなつもりは全くありません。生前贈与の事実を後からご兄妹が知るときっと不服が出る可能性が高いので、ここできちんと生前贈与のことをご兄妹に伝えるべきなのです。

 そしてほかの兄妹には別の財産を遺すとか、老後の面倒を見る費用とその共有持分を比べて兄妹の納得がいくようにしておくべきです。


 みんなで話し合いをして納得がいくのであればわざわざ登録免許税を払って今変更しなくても相続まで待てばいいのです。ただそれだけではこのあと何年もあるので、話し合いの結果を信託契約にするのです。不動産の登録免許税も相続の時と変わりません。所有権に戻すと取得税も登録免許税もかかってしまうので、売却するまでは信託財産のまま受益者の変更、受託者の変更をすればよいのです。


 兄妹で話し合った通りに誰が管理をして、誰が受益権を承継するかを契約書に書いておきます。ご本人が受託者となってお母様の財産を管理して、受託者としての報酬をもらわない代わりに受益権を承継するというようにしておけばよいと思います。


 お母様の気持ちを一番に重視して、お母様の相続がまだまだ先の時に当事者全員で話し合います。まだまだ先の時に話し合いをすると冷静に話し合いができます。これがお母様の相続が現実に迫ってから話し合うとなかなか本音が言えなかったりします。もしも、すでに兄妹との仲が悪くなっていて、話し合いをするのが難しい場合の対策は次回にお話ししたいと思います。

 次回のお話も早めに検討・対策を始めれば実現できますが、相続まで何年もない状態ではうまくいかないという方法です。


監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト代表


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1047号 2021年1月1・16日合併号 より 引用)





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