想いを叶える親愛信託 17

第17回「親の心に子が気づいた時の親愛信託」


将来、子供が改心したら 財産を渡したいが……


 前回、「放蕩息子(娘)対策」のお話をしましたが、最初から自分勝手だったわけでも、言うこと聞かなかったわけでもないと思います。長い人生で親子互いにいろいろなことが重なり、「財産を渡したくない」「渡すことに抵抗がある」となっているのではないでしょうか?


 もちろん、「たまたま戸籍上は子になっているが、血のつながりがないから渡したくない」という場合は別の対策を取らないといけませんが、本来の希望ではなく、何らかの原因があって財産を渡したくないという人は、「子が今のままだと財産を渡したくないけれど、将来改心してくれたら渡したい」という気持ちが心のどこかにあるのではないでしょうか?


 特に若くてお元気な時は「断固として子には渡さない」と言っていても、だんだん年を取るにつれ、気も穏やかになり「ちょっとは渡してもいいかな‥」と気持ちの変化が起こることも少なくないと思います。年を取って将来気持ちがどうなるかは自分でもわかりませんよね。でもその時にすでに認知症になってしまっていたら、もう何も対策をすることも変更することもできません。


 仮に何もしなければ法定相続人である戸籍上の子に財産はいくことになります。でも、「子供に渡したくない」となれば、お元気なうちに現金にして使い切ってしまうか、誰かに贈与してしまえば子供にはいきませんが、いつ亡くなるかわからないのに財産をすべて無くしてしまうわけにはいきません。


 そうなると遺言書を書くことになりますが、遺言書で、「もし子供が改心したら財産を渡す」とい書いても法的には認められませんし、改心した時に認知症になっていたら書き換えることもできません。


親愛信託の自己信託を活用した 信託内容とは


 そこで、親愛信託の中の「自己信託」を使います。自己信託とは、自分の財産を自分で管理して、利益を得るのも自分です。現状と何も変わりませんが、所有権である財産が信託財産に変わります。委託者も受託者も受益者も全部自分です。そのため、誰にも知らせることなく実行することもできますし、不動産だと登記して、知ってもらうこともできます。


 財産が所有権のままだと自分に判断能力がなくなると動かせなくなり、後見人がつけば後見人の管理下に置かれます。自己信託した財産は、後見人がついても後見人の管理下には置かれません。認知症対策をするのであれば、管理を交代してもらえる人を予備受託者にしておきます。受託者は法人でも構いません。法改正があり受託者の欠格要件が未成年だけになったので、認知症になっても信託は終了しません。


 ただ、認知症になるとその財産については取引ができなくなるので、予備受託者を決めておくべきですが、いなければ自分が亡くなるまで凍結させるというのも1つの方法かもしれません。所有権で持っていても凍結しますから同じことです。自己信託にすると不利になるというわけではありません。予備受託者を決めておけば認知症対策にもなります。


 では、実際に子供が改心した時のためにどういう風に信託を設計するかというと、ご自身がお元気であれば、自分の後に財産を承継させる二次受益者を子供に変更すればよいのです。ではもし、すでに認知症になっていた時の対策はどうするのかというと、受益者変更権者と受益者代理人を設定しておきます。これは知り合いでも法人でも信頼できる人であれば構いません。二次受益者を子以外の人に設定しておいて、信託の条項の中に「受益者変更権者は子供が書面で感謝の気持ちを表した時には受益者を変更しなければならない」としておきます。


 子供が改心すれば、感謝の言葉を口にするでしょう。形式上書面にして欲しいといえば、改心しているので書くと思います。方法はそれぞれ子供や親の特徴があると思うので自分なりの方法を指定しておきます。そして、親がまだ存命なら受益者代理人が二次受益者を変更し、すでに亡くなっていたら受益者変更権者が受益者を変更すればよいのです。親が弱ったり、亡くなって、初めて気がつくことってありますよね…。


監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト代表


略歴


2015年行政書士まつおよう子法律事務所開業。

16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1039号 2020年8月1・16日合併号 より引用)




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