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想いを叶える親愛信託 16

更新日:2023年2月16日

第16回「『放蕩(ほうとう)(ドラ)息子・娘』の対策」


財産を子に残したくない 意外と珍しくない相談



 子供が生まれた時はとてもかわいくて、親がいないと自分一人では何にもできないので、子供にとっても親にとってもお互いがかけがえのない存在なのだと思います。それがだんだん自分の意思が出てきて、そのうち反抗期になり、なかなか親の思う通りには育たないものです。


 大半の親子は、ある一定の時期を超えると分かり合えるようになり、仲良しになるのですが、まれにそうではないケースもあります。関係がうまくいっていないということは、必ず何か原因があるはずです。それが分かって改善できるものならよいですが、何が原因かわからない場合やどうしようもできない場合もありますよね。その状態が続くと修復不可能になります。


 私のところにご相談に来る方の中にも、「子供には財産は渡したくない」「財産を遺してあげたい気持ちはあるけれど、今のままだと遺すのは無理だと思う」など、何も問題がない親子が聞くと「なぜ?信じられない」というような悩みを抱えている人がいるのは事実です。しかも意外と珍しいことではありません。子供には全く財産を渡したくないという親が、ご自身の意思で遺言を書いて、渡したくない子供ではない別の人に自分の全財産を渡すという方法があります。


ケースバイケースで「親愛信託」を活用


 しかし、法定相続という制度があり、おせっかいな遺留分というものもあるので、それだけではその親の望みは叶いません。その時に親愛信託を使います。親がどうしたいかによっていくつか活用方法がありますが、まず本当に自分の財産を全く渡したくない場合です。

 子供が2人いて、長男には渡したくないけれど、信頼できる次男には渡したいというケースであれば、次男を受託者にして親愛信託契約を結び、不動産などの財産の管理をしてもらいます。そして、自分が亡くなった後の財産権を次男にしておくと、信託財産は相続財産ではないので、相続の手続きの必要がなく次男に財産権が承継されます。


 ただ、遺留分の問題がまだ判例が出ていないためどうなるかわかりません。長男は理由があって財産をもらえないわけですし、親の強い意思ですので、裁判で争えば十分勝てると思いますが、長男が遺留分減殺請求をしてくればたたかう必要が出てきます。


 この時に配偶者がご存命であれば、自分の後の受益権をいきなり次男ではなく配偶者に渡して、そのあとに次男に渡すようにします。信託と遺留分の関係で、委託者兼受益者が亡くなったあと1回目に受益権が承継されるときには遺留分の問題はありますが、2回目に受益権が承継されるときには遺留分請求はできないというのが通説になっていますので、長男に財産を全くあげたくないという願いは叶います。


 本当に財産を1円もあげたくないのであれば、信託財産以外の財産が死亡時にゼロになるようにする必要があります。まず、信託契約をする際にその時の財産を信託財産にします。その後に財産が増える度に追加信託していきます。そして、亡くなった時に遺言で信託財産になっていないすべての財産を信託契約に追加信託するということをします。そうすると相続財産はゼロなので、遺留分請求に対して受益者側が有利に裁判を進めることができます。


 もう一つ活用方法は、「不動産など財産そのものを渡すと無駄遣いしそうで不安」という場合です。このような場合には、信頼できる人を受託者にして、放蕩な子に受益権で財産を遺すようにしておけばいいですよね。そうすると勝手に売ることもできませんし、子に必要な分だけしか金銭を渡さないというようにしておくこともできます。


 もう一つの活用方法は、「子が今のままだと渡したくないけれど、将来改心したら渡したい」という場合です。意外と需要があるのではないでしょうか? このケースは次回紹介したいと思います。


監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト代表


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1038号 2020年7月16日発行 より引用)


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