想いを叶える親愛信託 14

第14回「遺産分割の対策に信託を活用しよう」



財産を持っている人の意思をしっかり残す


 自分の財産は自分がいなくなった後にどうなるのか、元気な時に考えておかないといけません。自分で管理できなくなったり、もしものことがあった時に慌てないようにしておく必要があります。何もしないままだと財産は凍結状態で、財産所有者が亡くなってしまうと法定相続になるか、遺産分割協議をする必要が出てきます。


 「法定相続で大丈夫」と言っている方がいますが、何にもしなくて法定相続になるのと、法定相続と同じような分け方にして自分の意思で遺すのは違います。「財産を持っている人の意思をしっかり残す」ことが大切なのです。


 まずどうしたいのかを考えること。それをきちんと伝えるためには何をすればいいのか? 自分の意思が決まったらそれを実現させるために行動しなければいけません。「問題に直面してからでいい」「面倒なことはしたくない」ではだめなのです。それでは自分が困ることになる、もしくは自分の大切な人が困る可能性があるのです。


 自分の財産に対して、何もしないと法定相続にするしかありません。しかも相続の手続きが非常に煩雑になります。相続人が多ければなおさらです。法定相続になると財産は共有になります。共有になると常に共有者全員の同意を取り付けなければなりませんし、印鑑と書類も必要です。一人でも連絡が取れない人がいるとその財産は凍結状態になります。


 共有にしないためには遺産分割協議をして、誰が財産を持つか決める必要があります。遺産分割協議をするためには相続人全員の判断能力がないとできません。遺産分割協議をするために、判断能力のない人に対しては後見制度を申請して後見人をつけます。一度、後見制度を利用するとその人の判断能力が復活するまで外すことはできません。認知症などで後見人をつけるとその方がお亡くなりになるまで後見人がついていると考えた方がいいと思います。


 自分が財産を渡したい人だけでなく、相続人全員で遺産分割協議をすることになりますので、相続人の中に連絡がつかない人がいる、もしくは判断能力がない人がいる場合には、遺産分割協議が必要ないようにしておかなければなりません。遺言書があれば遺産分割協議の必要もありませんし、共有にもなりません。しかし、財産を管理する人と財産を渡す人を別の人にしたり、自分の次の次に財産を渡す人を指定することはできません。遺言執行人がいなければ、相続人全員の同意で遺言とは違う分け方にすることもできます。


揉め事も無駄な費用も 回避できる親愛信託


 そこで、親愛信託を活用します。信託契約書があれば、自分の財産は信託財産となり、相続手続きの必要はなく、信託契約書に書いてある通りに財産権は承継されます。自分がお元気なうちに自分の代わりに財産を管理する人と、財産権を承継する人を指定しておきます。次の人だけでなく、次の次の人も決めておくことができます。


 亡くなる順番や認知症になる順番が変わっても親愛信託だと大丈夫です。たとえば配偶者がすでに認知症になっていて相続の時に困ることが予想される場合でも、子供や信頼できる人を受託者に指定して財産の管理をしてもらい、自分の後の受益者を配偶者にしておき財産権を遺すことができます。


 お子様に障がいがあり判断能力がないケースで、その子に所有権として財産を渡してしまうと凍結してしまいますし、遺産分割協議が必要な状態になってしまうと協議ができません。後見人をつけるとその期間は高齢者よりはるかに長くなり、後見人報酬もたくさんかかります。


 そうならないように親愛信託を活用します。自分の亡くなった後に相続手続きがは必要ないようにしておくと、もめごと揉め事も避けられるし、無駄な費用が掛からなくて済みます。

 何事も早めの対策が肝心です。新型コロナウイルス感染症対策で外出自粛などの規制がかかって、家にいる時間が増えている今だからこそゆっくり考えられるのではないでしょうか? 不動産をお持ちの方は信託を検討する絶好の機会だと思います。


監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト代表


略歴


2015年行政書士まつおよう子法律事務所開業。

16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1034号 2020年5月16日発行 より 引用)




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