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想いを叶える親愛信託 13

更新日:2023年2月16日

第13回「財産を分けることが困難な場合の信託の活用」


単純に分けられない「不動産」という財産



 所有する財産が、金銭のように自由に分けられるものであれば、自分がそれを遺したい人と思っている人にきちんと渡せると思いますが、そうでない場合もあります。財産がすべてお金ならどこにいても受け取れて、どこでも使えますし、自由に分けることができます。しかし、ほとんどの財産は自由に分けることが困難です。


 たとえば不動産です。自分が財産を遺したい人たちと不動産の数が全く同じとは限りません。もし、同じ数だったとしてもそれぞれの不動産の価値が同じとは限りません。誰にどの財産を遺すのかが決められない。遺された人が残された物に対して不満を持つというのはよくある話です。


 収益性の高いものは欲しいけれど、負の財産になりそうな田舎の不動産はいらないとそれぞれが言っている。だから決められない。…と言って何もしなければ、財産を持っているご本人が認知症になればその財産は凍結されてしまいますし、そのまま相続になれば揉めるでしょう。


 決められないから何にもしないのではなくて、決まった時に自分の思った通りに分けられるようにしておくことが大切です。そして、不動産のままだと分け方が限られますが、親愛信託を使うと遺したい人に均等に分けることもできるし、差をつけることもできる。そして、「管理する人」と「財産権を承継する人」を分けることができます。


 収益性の高い物件も負の財産になりそうな物件も、すべて信託財産にします。そして、所有権を受益権にすると、不動産ごとに分けるのではなく、「受益権として自分の望んだ割合」で遺すことができます。1つの大きな不動産も所有権のままだと、誰か一人を選んで渡すか、共有にするしかありません。しかし、受益権にすると遺したい人に均等に遺すことも可能です。


 今の段階で信頼できる人を財産の名義人になる受託者とし、自分が亡くなった後に財産権を渡す人を二次受益者として選んでおきます。これから先自分の考えが変わるかもしれません。その時に認知症でなければ、受託者を変えたり、二次受益者を変えることができます。


 今現在、財産権を持っている人は変わっていないので、この時に税金はかかりません。信託を実行する場合、所有財産から信託財産にする登記をするときには登録免許税が、土地の場合は1000分の3、建物の場合は1000分の4かかりますが、一旦信託財産になっている不動産の受託者を変更しても、二次受益者を変更しても登録免許税はかかりません。


共有財産の分散化・複雑化を事前に防ぐ


 もし、信頼できる人がいて、その人を受益者代理人に指定しておくと、自分が認知症になった後でも受託者や二次受益者の変更の手続きを受益者代理人が代わって行うことができます。今は、はっきり誰に管理させて、誰に承継させるか決まってなくてもとりあえず信託財産にしておくことが大切です。


 収益不動産で注意しないといけないのは、現行の税法では信託財産にすると損益通算ができなくなるということです。しかし、その他のメリットの方がはるかに大きいと言えるでしょう。


 すでに共有になっている不動産の場合には、誰に承継させるのか決めるのがもっと大変になると思います。その時に共有持分を信託財産として、名義を一人に集めておき、承継先も決めておいて、これ以上共有が広がらないようにしておきます。共有財産がそのまま相続になってしまうとどんどん共有者が増えていく可能性があります。


 これは、不動産だけではありません。自分の法人の株にも言えることです。株式の場合不動産よりももっと誰に渡すのかを慎重に選ばないといけません。そのため、なかなか誰に渡すのかが決まらないケースが多いと思います。収益物件を自己所有の法人の所有にしている場合、その法人の株式を誰に持たせるのかをきちんと決めておかなければならないと思います。


 親愛信託を使って、受託者と受益者を分けたり、自分の次に受益者になる人を複数にできることなどを活用して、自分の願いを叶えるために計画的に準備しておくことが大切です。


監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト代表


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1032号 2020年4月16日発行 より引用)



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