土屋ホールディングス 故・土屋公三元会長の軌跡と功績


 土屋グループの創業者で、土屋ホールディングス会長の土屋公三氏が7月15日に死去した。

 1969年に前身の土屋商事を創業し、82年に商号を土屋ホームに変更。93年に株式店頭公開、96年に東証2部と札証に上場。2001年に社長を退き代表取締役会長に就任。08年にホールディングス体制に移行し、11年に取締役会長に就任、17年に退任。享年80歳だった。



住宅不動産業界のみならず、

若手経営者の育成など 北海道の経済・文化の発展に貢献


 土屋公三氏の死を惜しむ声は多い。15年にわたり土屋グループの社外監査役を務めたキャリアバンク代表取締役の佐藤良雄氏は「土屋公三さんとは公私を通じて40年来のお付き合いになります。類まれな能力を持つ相談相手がいなくなるのは正直さびしい。後を引きついだ昌三社長が中心となって立派な会社に仕立ててほしい」。

 「北海道の住宅性能の向上や、業界の発展に大きな功績を残されたことに感謝しています。これからの業界の発展に力を貸していただきたかったことを思うと残念でなりません」(北海道住宅都市開発協会理事長高山壽雄氏)。


 サラリーマンからたった一人で土屋商事を創業し、その後土屋ホームをはじめグループ会社を設立。30年足らずで東証2部上場を果たし、創業から約40年でホールディングス化、直近(2020年11月~21年10月)ではホールディングス全体で300億円を超える年商の住宅不動産の総合企業グループに成長させた。


 北海道内で永年トップクラスの実績と知名度を誇っているのはもちろんだが、特に北海道の住宅不動産事業者として初めて上場し、東北、関東、関西に進出を果たしたことは、北海道内の住宅関連業界のみならず、他業種の全国展開に対しての先駆と後押しをするものだったといえる。


 住宅不動産業界においても、ヨーロッパ視察に赴いた際に刺激を受け、いち早く高気密・高断熱性能に着眼し、省エネ住宅を手掛けた。


 一方、身体に障がいを持つ人や高齢者などでも一般の人と同じように生活できる社会をつくるという考え方のノーマライゼーションを取り入れた住宅への取り組みを始め、85年に札幌市南区にノーマライゼーション仕様のモデルハウスを建設、その後住宅展示場のモデルハウスのアプローチに車いす用のスロープを設置、ノーマライゼーション住宅財団を設立するなど、今では当たり前の住宅性能や考え方を取り入れていたことはまさに先駆的な取り組みといえる。

黄綬褒章受章を「祝う会」で、博子夫人(右)へ感謝の意を述べた。

 そうした研究と取り組みなどが評価され、2004年6月に国土交通大臣表彰(建設事業関係功労者)、08年11月に黄綬褒章を受章している。もっとも同氏のそれまでの功績を考えれば、当然のことであり、むしろ遅すぎる評価ともいえる。





経営者は目先の価値観を乗り越えることが大切


 同氏を語る上で欠かせないのが、経営に対する情熱だ。過去に成功した先人たちに学んだことや自身の成功を基に経営哲学を手ほどきする人間社長塾(新社長塾)を主宰。道内の若手経営者の育成に力を入れていた。取材の度に経営の話になると熱弁をふるう同氏の姿が思い出される。


 経営にまつわる著書も多く、「生きがい、やりがいをそだてる」(致知出版社刊)のまえがきで、「企業は人材、つまり『企業は人なり』です」、また「住宅建築という仕事から言えば、お客様の命の次に大切な財産を扱うものとして『自分が家を建てるなら』という立場で、本当にお客様の人生にいい意味でかかわり合いを持っていかねばなりません」と記している。


 自身が購入した住宅が欠陥住宅だったことが、住宅産業に足を踏み入れるきっかけの一つだったというエピソードは有名だが、そうした経験が顧客、家族の目線で経営を実践する人材を育てるという使命がそこにあったのかもしれない。


 同氏はよく自身の名前を、「土(土地)と屋(家屋)、「お客様」「社会」「会社」の「三つの公(おおやけ)」として、お客様に住まいの提供を通して豊かな人生を創造してもらおうと、自身なりの天命を感じ、使命感を持って起業したと話す。同氏が提唱していた経営実践プログラム3KM(3KMの意味等は2面参照)は、そうした人材育成のために同氏が作り上げた人生目標設定プログラムだ。3KMの立ち上げに携わった前出の佐藤社長は「3KMはまさに当社で立ち上げました。私自身この3KMを規範として今も実践しています」と話している。


 葛西紀明選手や小林陵侑選手などを輩出した土屋ホームスキー部を立ち上げるなど、本道のスポーツや文化などの発展にも貢献している。

 2019年6月に創業50周年を迎えて開催された記念祝賀会で「現在(当時)、土屋グループは1313人の社員が在籍するプロ集団に成長しました。これからは若い経営陣が頑張ってくれます」とあいさつ。この日を機に経営のバトンはしっかりと、土屋ホールディングス代表取締役社長の土屋昌三氏をはじめとする経営陣に引き継がれた。


 本紙09年1月1日号(第784号)に掲載した、土屋ホールディングス代表取締役会長として取材したインタビュー記事の最後に、10数年先の現在にも通じるメッセージ(遺言)を残していた。


 「目先のことだけにとらわれて、『金だけ』『今だけ』『自分だけ』という風潮が、政治をはじめ世の中全体にあふれ、すべてを悪くしていると感じています。家づくりは5年、10年先にも作品が残る仕事です。組織のリーダーたちが今、こうした目先だけの価値観を乗り越えていくことが、非常に大切だと考えています」。


土屋公三氏のご冥福をお祈りします。

(編集長 盆子原薫)


(第1079号 2022年8月1日・16日合併号 1面より)

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