想いを叶える親愛信託 57
- oikaway4
- 3月21日
- 読了時間: 4分
更新日:3月25日
第57回「信託に対する誤解」

たくさんある信託のメリット
「わざわざ費用をかけて信託にする意味あるの?」「将来、認知症になって不動産が売却できなくなると困るので、そうならないように信託を活用するというのは納得がいくけれども、それ以外はしなくてもいいのでは?」「信託を活用していても遺留分はどうなるかまだ分からないんでしょ?」という事を言われることが続けてありました。
改めて聞いてみると、そのように思っている人は少なくなくて、私と同じ業種の行政書士の中にも同じように思っている人が意外にも多く、宅建士の方もそのように思っている人がいるのではないでしょうか?それは大きな誤解です。
もちろん信託にする意味はあります。メリットもたくさんあります。しかし、「信託を活用すれば認知症対策になる」という広告などがたくさん出ていて、それだけと思われてしまっているのに加え、「遺留分対策にならない」と思われてしまっています。だったら「遺言」書いておけば大丈夫!となってしまっています。
収益物件ではないので、契約することも更新することもないし、売るつもりもないから認知症対策は必要がない。だから信託は必要がないと誤解してしまっているけれど、そうではありません。相続税がかかれば相続税対策に信託が使えます。相続の手続きが複雑になりそうな場合は、信託財産にしておけば相続の手続き(相続税はかかります)はいりません。
遺言の場合、「遺言執行者は、執行後直ちに、その旨および遺言の内容をすべて相続人に通知しなければならないものとする」と民法で決められていて、相続人に通知することで寝た子を起こしてしまうようなことになることもありますし、「相続人」という縛りからは逃れることができません。
しかし、信託法での受益者の死亡による受益権の承継に「相続人」という縛りはないので、そこで相続人が登場することはありません。信託契約に書かれた通りに受益権は承継されます。そのため、相続の手続きがスムーズに進まないことが予想される場合は信託を活用すべきだと思います。
遺言だけよりは信託にする方が有利
相続人が関係ないのであれば「遺留分はどうなるの?」という疑問が出てくると思います。もちろん、「信託法ではそもそも相続人という概念がないので、関係ない」と主張できます。私は信託財産に遺留分侵害は請求できないと考えていますが、ケースバイケースですし、まだ判例もありません。遺言を書いている場合の遺留分は判例もたくさんありますし、民法では相続人という規定がありますので、遺留分侵害は主張できますし、よほどの事情がない限り認められるでしょう。
しかし、信託財産に対しては請求できるかどうか分かりませんし、認められるかどうかも分かりません。万が一、請求できて認められたとしても遺留分侵害額以上の額になることはありません。信託を活用して遺留分対策をしていると、請求してこないかもしれないし、請求してきても認められないかもしれない、最悪認められても遺言をしていた時と変わらないとなるので、遺留分侵害額は「信託」の方が「遺言」よりも少ないか、最悪でも「信託」と「遺言」が同額になるので、遺言だけよりは信託にしていた方が自分に有利になるのです。
また、いったん遺留分相当分の受益権を遺留分請求してくる人に渡しておいて、その人が亡くなった後、本来渡したい人に戻すこともできます。これはもともと財産を持っていた人が自分の財産について決めておくことなので、財産をもらった人が自分の財産の行く先が決まっているからといって不公平でもなんでもありません。
元々財産を持っている人が亡くなるまでに使ってしまっていればもらえなかったものです。その財産に制約がかかっているからといってもらえるだけありがたいことなのです。遺留分相当の受益権を渡す方法については次回にご説明したいと思います。
監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)
よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト理事長

略歴
2015年行政書士まつおよう子法務事務所開業。
16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。
著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。
(第1106号 2023年12月1・16日 より 引用)
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