半導体・鉄鋼・木材・木製品・生コン
建築資材全般の高騰・品薄が長期化
ウッドショック、アイアンショックなどの言葉で一般消費者にも知られるようになった住宅建築資材の高騰や品薄。昨春には年内に落ち着くと予想する業界関係者も少なくなかったが、むしろ逼迫する資材の種類が増え、市場の混乱はさらなる長期化の様相を呈している。現状をレポートする。
「半導体不足の影響でボイラーの納入が遅れていて、新築戸建ての3月引き渡しに間に合わない」。道内で営業展開する全国ハウスメーカーの1社がそう打ち明ける。「地方は在庫でどうにか対応できそうだが、戸数の多い札幌では無理。やむを得ず、市内でまだ成約していない建売物件に付いているボイラーを外し、引き渡しする戸建てに移設して急場をしのぐことにした」。
現在流通するボイラーは原則的に半導体部品を使って電子制御する。木材などの値上がりなら価格転嫁という解決手段があるにはあるが、ボイラーがなければ引き渡しできず、住宅業界にとって事態はより深刻だ。
半導体不足を客観的に検証できるデータは見当たらないが、一般的に、コロナ禍でDX需要が拡大して世界中のIT機器メーカーが増産に走った一方、半導体工場が感染対策で体制を縮小せざるを得ず、需給バランスが崩れたとされる。世界の大型工場で災害による閉鎖が続いたのも一因のようだ。IT業界や自動車産業などの購買力が強く、住宅設備機器向けの出荷優先度が相対的に下がっている可能性もある。
半導体使用品だけでなく、建築資材は全般に価格高騰・品薄の状況が続いている。石狩市内に戸建てを新築し、3月下旬に入居を予定する札幌市内の男性会社員は、ハウスメーカーから「納品が滞っている建具、設備があり、予定の期日に引き渡せないかもしれない」と告げられた。「混み合う時期なのにこれでは引っ越し業者の予約もできない」と戸惑う。
需給を反映して動くのが価格だ。木材価格は足元では高止まりしている。日銀が公表する企業物価指数で「木材・木製品」分野を見ると、2015年の平均値を100としたとき、2022年1月は速報値ベースで166。21年1月は104だったが春以降急激に上昇し、10月に160を超えてから下がっていない。
マンション建築に関わる「鉄鋼」分野は同じく1年前の111から139に上がっている。生コンクリートは経済調査会の「積算資料」によると標準物(強度21・スランプ18・粗骨材20㎜)で1㎥当たり1万5500円と1年前より2割近い高値で流通している。
かつてなく高い資材調達の難易度
各社に求められる生き抜く知恵
先を見通すためにはやはり日銀が毎月公表する輸入物価が参考になりそうだ。海外からの資材が多い日本の住宅業界では、輸入時の相場が半年程度は市場流通価格に影響する。
ここでも高止まりの状況が見られる。「木材・木製品・林産物」の輸入物価は2015年平均を100として、今年1月は159。昨年2月まで100未満だったが秋にかけて上昇し、高水準が続いている。「金属・金属製品」は171と、1年間でほぼ5割アップの高騰ぶりだ。輸入した在庫がはけるまでの間は、少なくとも相場が下がることは考えにくい。
貿易価格上昇の一因であるコンテナ不足も解消されない。日本海事センターによれば、北米から日本までのコンテナ運賃は20年半ばに比べて約2倍の水準が続いている。
資材調達の難易度はかつてなく高い。ハウスメーカーを始め住宅産業各社には、生き抜く知恵が求められる。
(第1070号 3月1日発行 1面より)
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