【2010年インタビュー】土屋HD 故・土屋公三 元会長

“運に恵まれていた時代”から“多様なニーズに応える時代”へ


2010年当時の土屋公三氏

時代の変わり目を読む力


――御社の創業以来の歩みはいかがでしたか。


 土屋 大きく言えば運に恵まれていた時代でした。札幌市の人口は、私が会社を興した翌年に100万人を超えましたが、現在はほぼ2倍になっています。その勢いとともに、私どもも成長することができました。


 また創業した昭和44年に新都市計画法、49年には国土利用計画法が施行されて、住宅・不動産業界が活性化し、地価も高騰していました。その間の48年にはオイルショックが発生して非常に厳しい時代となりましたが、そうした年にヨーロッパの住宅を見て回るツアーに参加して、「省エネ」を強く意識することになりました。そこで一緒に回った大学の先生の協力も得て、「高気密・高断熱」の住宅を開発したわけです。


 そしてその工法で建てた家で、58年に建設大臣賞を戴きました。さらに63年から全国展開を始めましたが、これは結果的にミスを犯しました。


――どのような点がミスだったのですか。


 土屋 各地の工務店さんと提携したのですが、当時、本州方面では“夏を旨とする”住宅が大半で、気密性や断熱性能への関心が低い状況でした。その結果、市場も低価格住宅の受注・建築が主流で、断熱性を高めることでコストが上昇するような住宅の受注が難しかったのです。


――平成時代の歩みはいかがですか。


 土屋 全国展開から上場に方向を転換して準備を進めましたが、バブル崩壊で予定より遅れ、北海道の住宅・不動産業として初めて平成5年に東証に店頭登録し、8年には二部に上場いたしました。


 さらに一部へ指定替えの準備が整った10年には拓銀が経営破綻して、持合い株の下落で利益計画が狂ってしまいました。そして当社だけではなく、業界全体が苦しい状態に陥りました。その後、16年には60歳を迎えましたので、私は会長職に就きましたが、今度は減損会計・時価会計という会計基準の変更によって、本社社屋などで大きな評価損が出て赤字が続いてしまいました。


 この上場に際して、本来は持株会社にしたかったのですが、当時はまだ禁止されていたため叶いませんでした。それが認められるようになったため、平成20年に土屋ホールディングスを設立してグループ5社の管理部門の機能を一本化しました。こちらはお陰様で初年度から黒字を達成することができました。


国が認めたグループの総合力


――土屋ホールディングスは堅調ですが、住宅業界全般は厳しい状況が続いています。今後の見通しをお聞かせ願えませんか。


 土屋 戸建て着工は急激に減少していて、昨年はピーク時の七分の一まで減りました。また現状では住宅数が世帯数を大幅に上回っています。さらに当初『二百年住宅』と言われていた長期優良住宅が増えてきますので、全国の着工総数がほどなく50万戸、将来は25万戸まで減少するでしょう。


 そのうえ土地も値上がりしない状況が続いていますので、ローンで家を建てるのが困難な時代になります。今後は「所有から利用へ」の時代、つまり土地を所有している人が借家を建てる時代になると見ています。マイホームという発想に拘っていると、石炭産業のようになってしまうでしょう。


――着工が益々減っていく時代には、どのような手を打てば良いのでしょうか。


 土屋 これからは、シェアアップは可能ですが、拡大主義は採れません。住宅ニーズの多様化に応えて、住宅総合メーカーとしての方向性を目指すべきでしょう。


 私どもでは、新築、不動産流通、リフォームなどをグループ内で一貫して対応する体制を早くから整えてきました。ノーマライゼーション住宅財団を創ったのもその一環です。それでも住宅産業の拡大期は業績を伸ばすための展開を各事業会社が個々に行なっていましたが、厳しい時は一致団結してお客様に対応しています。


 具体的には、目の前のお客様のニーズにお応えできる事業部門を紹介、あるいは当該部門の担当者と同行して、そのニーズにグループ内で完璧に対応するように努めております。結果として、昨年、土屋ホームが提案した「H&Hサスティナブルシステム」が国から「長期優良住宅先導的モデル事業」として採択を受けることができました。

 また、こうしたグループ一丸の体制で業績を伸ばして配当を出し、株主の方々の期待に応えることも、上場企業としての役割だと思います。


――御社とは異なり一貫体制が整っていない事業者も多いようですが、今から体制を創るとなれば大変なことですね。


 土屋 百年以上続いてきた企業を見ると、時代に合わせて事業の内容を変化させています。さらに異業種への進出なども行なっています。そのような切り替えができないのであれば、厳しい言い方ですが、退場を選ぶしか途はないのではないでしょうか。


(「住宅産業新聞」2010年3月16日号より抜粋)

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