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【連載】想いを叶える親愛信託 4

更新日:2023年2月16日

第4回「共有対策と遺留分の分割払いに使える信託」


親愛信託を使うことで不動産承継の悩み解消


 自分が大切に築いてきた財産や、先祖から守ってきた財産を、誰にどうやって承継させるのかをお悩みの方はたくさんいると思います。金銭なら自分がこの世の中にいる間にすべて使い切ることも可能な方もいるでしょう。しかし、不動産はそうはいきません。悩みなく承継出来ればそれに越したことはありません。しかし、そうでないことの方が多いでしょう。


 *親愛信託を使うと解決できることがあります*


 まず、ご自身の不動産を信託財産とします。

 そのうえで、①遺したい人が複数いてどう分けたらよいかわからない場合には、「受益者指定権者」を使います。

 どのようなことかというと、ご自身の持っている財産権を渡す人を決める人(法人でも可能)を指定しておくのです。財産を持っている人(受益者)が亡くなった時に財産を引継ぐ人(次の受益者)を決める人のことを「受益者指定権者」と呼びます。ご自身が亡くなった時、自分の代わりにその時の状況を見て一番適切な分け方になるように、決めてもらうのです。その他にも、受益権を渡した後に、状況が変わった時には、その受益者を変えることができる「受益者変更権者」を指定しておくこともできます。もちろん受益者を変えた場合には、財産権が移動するので、その変えた受益権は贈与税の対象になります。

 ②平等に分けたい場合には、不動産そのものを平等に分けることは難しいけれども、受益権にすると、割合で分けることができるので平等に承継することができます。2分の1でも3分の1でも自分の思った通りに分けることができます。

 ③不動産の持分を信託することもできるので、すでに共有になっている不動産の持分を信託して、受益権にして自分の分けたいように分けなおして、承継することもできます。


遺留分対策に親愛信託・遺言・生命保険を活用


 では遺留分対策はどうでしょう?これまでは、遺留分減殺請求をされた場合、不動産そのものを要求されるとその不動産を渡すか、遺留分相当分の持分を渡さないといけませんでした。しかし、民法改正になり、遺留分減殺請求権が債権になったことで、不動産そのものではなく金銭を渡せばよくなったのです。しかし、これまでは、遺留分減殺請求をされたら、信託財産としておいた受益権を渡すということが出来たのですが、債権になったので金銭を渡さないといけなくなりました。遺留分相当分の金銭を支払えるように、財産を承継させたい人を受取人とした生命保険に入っておき、遺留分減殺請求をされた時に支払えるようにしておくという方法もあります。


 たとえば、「子供が2人いて、長男に財産を渡したいが、親不孝者の長女には財産を渡したくない」とします。すべて、長男に相続させる遺言を書きます。実際に相続が起こった時に長女は遺留分を請求してくるでしょう。その時に長男が現金で支払えるように長男を受取人にした生命保険に入っておくということです。


 このケースで、信託を使い対策をすれば、遺留分権者に対しては、

 ①財産を全く渡さない②遺留分相当分の受益権を渡しておく 2つの方法があります。


 ①は、まだ判例が出ておらず、裁判で信託財産は相続財産でないことを主張し、裁判をすることになるでしょう。

 ②は、遺留分が5000万円だとすると、金銭ですと5000万円渡さないといけませんが、受益権の場合、収益不動産の5000万円分に相当する受益権を渡します。不動産全体が2億円で家賃が100万だとすると全体の家賃の4分の1を渡していけば良いので、遺留分の分割払いのようなことができます。さらに、受益者連続にしておくと長女が亡くなった後に長男の子供に戻すこともできます。1世代飛ばして長男側の孫に不動産を残すことができるのです。親愛信託、遺言、生命保険などを使い遺留分の対策をします。


監修:特定行政書士 松尾陽子(まつお ようこ)

よ・つ・ばグループ協同組合 親愛トラスト代表


略歴


16年1月ソレイユ九州発足、同年8月法人化し(一社)よ・つ・ば親愛信託普及連合に名称変更。17年9月協同組合親愛トラスト設立。現在は専門家向けの連続講座やZoomセミナーなどを通じて親愛信託の普及活動に励む。

著書に『理想・希望通りの財産管理を実現する!カップルのための「親愛信託」』(日本法令)、『ここまで使える!自己信託&一般社団法人を活用した資産承継・事業承継(河合保弘氏との共著)』(日本法令)などがある。


(第1016号 2019年7月16日発行 より引用)

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