「おうち時間」で変わる家

 2年前、「おうち時間」という言葉が誕生した。新型コロナウイルスの拡大で加速したテレワークやネット配信サービス普及を背景に在宅時間が増加したことを受け、住環境の質を高めたいという傾向が強まった。また住宅でできる感染症対策にも幅広い層から関心が寄せられている。

 インテリアコーディネーターのプレザント代表・橋谷のり子氏の談話を中心に、今の時代に求められる住宅像を探った。


ワークスペースの普及【賃貸・持家】


 コロナ禍は住まいに対する人々の感覚をどう変えたのか。


 三菱UFJ銀行がことし3月、住宅購入を検討する20―40代の男女400人に実施したアンケート調査によると、コロナ禍で駅からの距離や間取り、住宅購入の予算等住まい探しの条件に変更があったと回答した人は40%。そのうち「広さや間取り(建坪を広くする、書斎を設ける等)」は55%に上った。


 また「広さや間取り」の希望条件が変わった理由は「在宅時間が増えたので、プライベート空間を作ろうと思った」が最多で32%、続いて「在宅時間が増えたので、リビング等特定のスペース・部屋を広くしたいと思った」が30%、「テレワークが増えたので仕事部屋を設けようと思った」が16%だった。


橋谷氏が手掛けたホームオフィス

 橋谷氏によると、新築の場合は8割がホームオフィスとして使える空間を希望し、WEB会議時に背景にしたい場所のクロスを張り替えるなど、部分的なリフォームも増えている。一方、賃貸ではネット会議時に背景になりそうな場所にアクセントクロスを配するなどの工夫が物件の人気アップにつながるという。



グレーのアクセントクロスが印象的なWIC



 防音的な配慮からウォークインクローゼットをワークスペースとして使うケースも多く、内側にアクセントクロスを貼って気の利いた空間を演出するパターンも流行だ。




マストのWi-Fi・宅配ボックス 内装の充実【賃貸】


 道内の不動産業者によると、賃貸の検索条件にWi―Fiや宅配ボックス設置を設定する人が若者を中心に増えている。ネット通販の日常的案利用が定着し。既存物件への追加・リフォーム対応でも必須事項となった。

 また橋谷氏は、賃貸の内装を担当する際は、立地条件を十分に加味した提案を心掛ける。「たとえば郊外の閑静な住宅街ならクロスで華やいだ雰囲気を作る。住空間だけでなく、居住者の生活全体が心地よくなることを意識するのがコツ」という。


収納の拡大【持家】


 玄関横のシュークローゼットを広く取り、アウトドアやスポーツで汚れた衣類を室内に持ち込ませない間取りも昨今人気が高まっている。「コロナ禍前から広がっていたが、感染症対策の一環として設置する人が増えた印象。玄関の手洗い場も同様」(橋谷氏)。


家事効率化【持家】



アイロン台付のファミリークローゼット。略称は  「ファミクロ」。

 共働き家庭の増加を背景に、戸建てや分譲マンションでは洗面所にランドリースペース兼クローゼットを設置する「ファミリークローゼット」が増加している。

 「お風呂から上がったらその場でタオルや着替えを取れるので、子供に早い段階から自立的な行動を促せる。同時に、洗濯機から洗い物を出したらすぐ干せて、乾いたら取り込み棚に収納という無駄のない家事導線も実現できる」(橋谷氏)。

アイロン台を設置すれば、さらなる効率化も可能だ。


 またキッチンダイニングを広くして、リビングを狭くするのも最近の流れだ。料理スペースと食事をする場を生活の中心にすることで、忙しい家庭の家事負担を削減できるのが人気の要因だ。


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 コロナ禍は、住まいに対する意識の変化とともに、居住者が最も過ごしやすい空間について改めて考えるきっかけを生んだ。賃貸・持家それぞれの居住者の希望を叶える間取りや設備の普及に今後も注目したい。



はしや・のりこ


 札幌出身。町田ひろ子インテリアアカデミー卒業後、コーディネート事務所、住宅メーカー勤務などを経て現在フリーランス。

 手掛けた宿泊施設は『一休コンシェルジュ』の『一休社員も憧れる、「泊まりに行きたい」別荘7選』に選出。CLASSY.、日経ウーマン等、雑誌掲載も多数。

 2021年、一般社団法人インテリアコーディネーターフリーランス協会を設立。オンラインスクール運営で後進の育成にも当たる。


(第1081号 2022年9月16日号 4面より抜粋)



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